本の感想などをつらつらと。


by nino84
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『ゴシック&ロリータ幻想劇場』

『ゴシック&ロリータ幻想劇場』(大槻ケンヂ、角川文庫)を読みました。

エリザベス・カラーを首に巻いた少女たちがこの世界に解き放たれた―。
彼女らは、しかし、ペテルブルグの歴史改竄主義者たちによって射殺されていった。彼女らの屍と血の海と、そして色とりどりのエリザベス・カラー。それらは1万年の時を超えても、美しさを保っていた…。
(「巻頭歌―エリザベス・カラーの散文詩」より)


久しぶりの更新のような、そうでもないような。前回がピエール・クロソウスキーの難解なものであっただけに、スッキリサッパリ読めるものをと思い、少し違った方向の作品を手にとって見ました。

さて、本作の著者は、大槻ケンヂさん。筋肉少女帯などで音楽活動をしている方です。同時に著作活動もしており、個人的には『グミ・チョコレート・パイン』などが有名かなと思っています。しかし、私はいずれの作品も読んだことはなく、彼の作品を読むのは今回が初めてになります。
本作を読んだ印象は、一言でいえば、乙女的な雰囲気だな、というものです。本作が「ゴシック&ロリータバイブル」という少女ファッション誌に掲載されていたということもあってのことかとは思いますが、乙女の儚さというか、そういうものが感じられます。ただ、それと同時に、やはり男性だからか、切れ味の鋭さももっているかな、という印象です。どこか嶽本のばらさんに似た部分もありながら、彼よりも割り切る感じがあり、物理的な意味で攻撃的な感じがしました。

さて、本作は短編集ではあるのですが、それぞれが非常に短く、それが20作も収録されています。単純に今までの方法でこれを取り上げていくと、20日かかります。なかなか時間がとれないということもあるので、今回はまとめて書こうと思います。

雑誌に掲載されていたから、ということもあるのでしょうが、本作の主人公はそのほとんどがフリフリの格好をした少女たちになっています。その少女たちは、彼女らなりの悩みを抱えています。それは、子どもとは違ってきたけれど、大人にまでは至らない、そんな微妙な乙女のものです。端的に言ってしまえば、多くは恋であったり、夢であったりするのです。
その悩みを一見して見えないようにするために、描かれる彼女たちはその姿をもって武装します。世間とはすこしズレた格好をすることで、現実と相対しないようにしているのでしょう。それでも、彼女らは現実に生きていて、悩みを抱えています。ただ、彼女らは、それを現実とすりあわせることをどこか拒んでいて、そのためにむしろ純であったりします。
そして、それが非現実的な出来事のなかであらわになるのです。「妖精対弓道部」、「戦国バレンタインデー」、「爆殺少女人形舞壱号」、「ギター泥棒」、「ユーシューカンの桜子さん」、「ゴスロリ専門風俗店の七曲町子」、「おっかけ屋さん」、「ぼくらのロマン飛行」がそのような作品。そして、そうした悩みをかつてやり過ごしてきた、大人たちを描いているのが、「メリークリスマス薔薇香」、「夢だけが人生のすべて」、「新宿御苑」といった作品と括ることができるかと思います。

自分の弱さを受け止められる人は、すばらしい人です。しかし、それは自分が弱いことを認めることですから、難しいと言わざるを得ません。しかし、それをしなければならない時もあります。直截的にこう書いてしまうと、身も蓋もないのですが、そうしたことにつまずく、その多くは、やはり本作の主人公のような年齢の人たちでありましょう。それこそ恋などの人間関係の悩みがでてくる年頃ですし、それらに対する解決策は、常に正しいものなどなく、思い通りにならないこともでてくるのですから。
それを正面から描くとなれば、それを乗り越えるというプロセスは直面化して乗り越えるというものになりがちです。しかし、それは多くの人にとって、現実味がない場合があります。すべてのひとが直面化できるわけではないからです。あえて現実的でない場面で、それをあらわすと、それはすこし違ったかたちであらわれることになります。その問題自体が現実的なものであっても、現実味は薄れるように思えます。本作は、現実からかけ離れた場面設定が多くでてきますが、そのなかで扱われるテーマはあり得そうなものです。変化球が好きなら、こんな感じもありでしょう。

ちなみに、個人的には、「ギター泥棒」、「ボクがもらわれた日」がヒットでした。前者は、オチが一種ベタではあるけど、キレイにおちています。また、後者は、主人公=イヌなのが卑怯です。想像するとかわいい。ちなみに、オチは、なんとなく大槻さんらしいな、と思ったりしました。
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by nino84 | 2009-02-06 18:53 | 読書メモ