本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「勤労感謝の日」

「勤労感謝の日」(絲山秋子、『沖で待つ』文春文庫収録)を読みました。

勤労感謝の日など、無職者にとっては単なる名無しの一日だ。そんな日に、近所のおばさんが、私に見合いをセッティングした。彼曰く、「僕って会社大好き人間」だそうだ。私はその場を抜け出し、かつての同僚に愚痴をこぼす。

現実世界の締め切りなんのその。短編だからとの中途半端な合理化によって、してます、読書。今回は絲山秋子さんの短編集です。ちなみに表題作「沖で待つ」は芥川賞の受賞作だそうです。

さて、本作の主人公、「私」はかつては某社で女性総合職として働いていた女性です。会社の上司に無礼をし、仕事を辞めてしまい、今は無職となっています。すでに三十路をとうにこえ、無職。本人としてもかつての総合職という立場からすれば、かなり焦る状況にあります。
そんな中で、セッティングされたお見合いは、勤労感謝の日。しかも「会社大好き人間」がやってきて、今の自分の立場の惨めさを改めて認識させるものでした。どこか馬鹿にされているような雰囲気に耐えられず、かつての同僚に愚痴をこぼしていきます。同僚と一通り話した後、近所の飲み屋に。そこでもそこの店主に愚痴をこぼします。
それで「私」はふと、その店主が勤労者であったことを思い出します。「私」は店の経営が厳しいのを見聞きし、それでも店主が自分の夢だからとがんばっていることを聞かされます。
見合い相手は自らを「仕事大好き人間」といい、それで私は引いてしまうのですが、むしろその言葉に引っかかっているのではなく、彼の人間性が気に入らなかったのでしょう。初対面でスリーサイズを聞いてくる、無職であることに言及する。そんな男を気に入るわけはないのです。一方、居酒屋の店主も、いってしまえば「仕事大好き人間」ですが、見合い相手とは違います。彼は、仕事大好きですが、それだけでないものも持っています。それだけでないものは、端的にいえば人間性でしょうが、ここではあまり具体的な形にはなりません。いろいろな人がいるんだということでしょう。少なくとも、女性総合職として懸命にがんばってきて、仕事だけという世界にいた「私」は、厳しい世界の中で、「仕事大好き人間」といえば、見合い相手のような人しか知らなかったのでしょう。「私」は、それとはちがう仕事のあり方を感じさせてくれた店主に感謝します。

結局、「私」には、元女性総合職としてのプライドというのがよくも悪くもあって、「私」はどこかで居酒屋の店主を見下していたところはありましょう。しかし、かつての自分と同じような地位である見合い相手は、尊敬できる部分などなにもない人でした。それは自分がそのまま仕事を続けていれば、そうなったかもしれない姿です。一方で、居酒屋の店主は、総合職という「私」の価値観からすれば、劣った人間です。それでも「私」は彼の仕事観を聞き、心動かされるのです。仕事に対する姿勢を考える作品なのでしょう。


仕事している方には自分を振り返られる作品でしょうか。そんなに激しく働いていないので、いまいち分かりませんが、いかがなものかしらん。正直、ピンときませんでした。話の筋としては分かりますが、ぼんやりしたものがぼんやりしたままで終わってしまいました。もちろん、自分で考え、深める時間が少ないというのもあってのことなのでしょうが。
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by nino84 | 2009-02-24 22:18 | 読書メモ