本の感想などをつらつらと。


by nino84
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『ピカソ―巨匠の作品と生涯』

『ピカソ―巨匠の作品と生涯』(岡村多佳夫、角川文庫)を読みました。

ピカソの幼少時代からその晩年にいたるまで、彼の作品の変化を時代背景を交えて解説する。

絲山さんの『沖に待つ』はまた続けて感想を書きますが、先に読み終わったので、こちらの本から書こうと思います。本書は、ピカソの人生を追って、その作品を解説するというガイド本となっています。

ピカソの作品といえば「ゲルニカ」であったり、「泣く女」であったりが個人的には有名かな、と思っています。また、ピカソといえばキュビズムで描いている人という印象もありました。私の知識はそれくらいで、いわばピカソの名前と作品を何点か知っているくらいの美術初心者です。
本書は、そんな人向けに書かれたガイド本といえるかと思います。ピカソの幼少時代から、亡くなるまでの作品を一部写真を交えながら解説してくれている。ただ、解説といっても作品の解説というのは最小限になっており、ピカソがどのような時代背景のなかで、どのような影響を受けながら作品を制作していったか、ということが主に解説されています。
ピカソは、スペインからパリへ出て、そこで友人カザジェマスの死を契機に青色を主体とした表現を続けた青の時代に入ります。そこから彼の表現は、ローズの時代、アフリカ彫刻の時代を経て有名なキュビズムへと至り、さらに古典主義の時代があり、そこから再び事物の再構成を進めていくようになります。こうした作風の変遷を解説してくれているのです。そのなかで取り上げられる作品は、タイトルこそしらなかったものの、その多くは見たこともあるものが大半で、そうした点でも初心者向けの本と言えるかと思います。こうして時代別に整理されていると、たしかにピカソの絵が変化していく様がみえ、おもしろいです。
青の時代の作品は、ピカソの心性をよくあらわしており、暗く沈んだ印象です。そこかから徐々に立ち直っていくローズの時代もまだその暗さをどこか引きずっているように思えます。ローズの時代の作品は、痛々しく感じてしまいます。そして、キュビズムの時代は、生涯を通じてそのような表現方法の断片は見えますが、それだけを突き詰めた、という時代はそれほどながくないようです。こうしてみると、むしろ常に新しい表現方法を模索しているということが分かります。また、パートナーを変える度にその人が主題としてあらわれるなど、時代背景や彼の生活のなかでの出来事によってその表現が変化していくのも追えておもしろいです。さらに、作品の写真が入っているという構成もよく、何度も作品の写真を見直そうかな、という気にさせてくれます。


ただ、個人的には一点、気になるところがあります。本としては致命的ですが、本書は文章が読みにくいと感じたのです。本書の文体は普通です、それほど文自体はよみにくいということはありません。しかし、文章としては、エピソードの合間合間に、余談を挟み込み、論点が一時的にズレてしまい、読みにくくなっています。周辺知識としてはおもしろい知識なのかもしれません。しかし、ピカソの話からはなれて、その周辺の表現者の話、さらにその表現者の周辺状況へとだんだんと話がズレていくのは、ピカソの解説を目的として購入している私としては、読みにくく感じられました。著者の知識自慢につきあっているようで、どうも読みにくかったのです。
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by nino84 | 2009-03-01 22:27 | 読書メモ