本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「氷の上のガレオン」

「氷の上のガレオン」(木地雅映子、『氷の上のガレオン/オルタ』ピュアフル文庫収録)を読みました。

斉木杉子、11歳。私は自分が天才だと自認している。他のクラスメイトには私の言葉が伝わらない。ある子は私を「友達」だとよってくるけど、それはどんなものなの?
家に帰れば、そこには図書室とハロウがいる。そこでなら、私の言葉が通じる。だから、学校なんてなけりゃいい。



普段あまり読まない類の本を読んでみました。借りたのですが、その人も人から勧められたそうで、こういうのを口コミで広がる、というのでしょう。文庫のレーベル名も知りませんでしたから、ホントに接点のなかった本といえます。

さて、本作の主人公は小学生の女の子です。彼女には、2人の兄がいて、父と母の5人暮らし。父は、杉子からみても、なにをしているかはっきりしない人で、ふっとどこかへ旅に出るかと思えば、またふと戻ってくるような人です。その留守を守る母は詩人。
杉子の家では彼らの家族のなかでしか通じないような言葉が飛び交います。それは杉子らが独特な生活をおくっているからですが、杉子はそこからくるズレをこれまで感じてはいませんでした。しかし、11歳になって、今、彼女は周りとのズレを感じ始めます。

普通の父は突然、家庭を放りだして、旅に出たりはしません。でも実際には出て行ってしまう父。母もまわりの大人も、それを別に問題とは思っていないようです。人と違うことに対して、すこし意識してしまう時期。でも、その感じを父も母もただ問題ないと言っているようにみえます。受け止めてもらえていないように感じるのです。そこででてくるのがハロウです。ハロウはいつも家にいて、つねに杉子やその兄の気持ちを受け止めてくれます。また、杉子は学校でも話の通じる大人と出会います。それは音楽の先生でしたが、杉子は学校でもその人のところに通い詰めになります。そして、クラスでははますます影を薄くしていきます。
ハロウや音楽の先生に支えられ、杉子は少しずつ感じているズレを意識化していきます。そして、音楽の先生から、母の言葉を聞き、母のやさしさを感じ取るのでした。


言ってしまえば、親父しっかりしろよ、という話かな、と思えます。父は自分の生き方をその家族に押しつけているにすぎません。もちろん、「それぞれがそれぞれでいい」というのは聞こえはいいですし、それはそうだと思えます。しかし、だからといって、放っておいていいということではないでしょう。生き方で示している、ということもできるのでしょうが、どうでしょうか。それを子どもが分かる年齢かといえば、少し疑問です。
もう少し成長すれば、それもわかるのでしょうが、杉子はまだそれが分からない年齢だと思えます。彼女はやっとズレを認識し始めた年齢なのですから。話のなかで、杉子は成長していって、ガレオンが氷を砕いて新たな陸地に着くように、苦しさを乗り越えて新たな地平に到達するのですが、それにしたって、ハロウの助けがあってこそです。結局、父の背中だけをみて、というのは難しいのです。ハロウが父性を担っているのは話としてはともかく、家族としてはどうなのだろうか、と思ってしまいます。
家族という点から言えば、杉子には、兄弟が3人いることで、助かっている部分はありますし、またハロウの存在や、音楽の先生の存在が杉子をサポートしています。そうしたサポートがあるからこそ、杉子は父や母になんとかついていけているといえるように思えます。
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by nino84 | 2009-03-20 10:54 | 読書メモ