本の感想などをつらつらと。


by nino84
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

『小僧の神様 他十篇』

『小僧の神様 他十篇』(志賀直哉)を読みました。

太宰治の『如是我聞』を読んだことであまり良いイメージのない作家ではあるのですが、とりあえず読んでみなければ何も言えないだろうということで読んでみました。といっても、長編『暗夜行路』ではなく短編集です。

収録作品は『小僧の神様』、『正義派』、『赤西蠣太』、『母の死と新しい母』、『清兵衛と瓢箪』、『范の犯罪』、『城の崎にて』、『好人物の夫婦』、『流行感冒』、『焚火』、『真鶴』の11編です。先入観が問題なのか、あるいは作品が元来そういうものなのか分からないのが難しいところですが玉石混合という印象を受けました。
具体的には一言多い場合があるのです。『小僧の神様』の終わりはまさにそれで、「作者は此処で筆を擱く事にする。実は小僧が… ― とこういう風に書こうと思った。しかし…少し残酷な気がして来た。それ故作者は前の所で擱筆することにした。」となっています。筆を擱くと言いながら、構想だけ書いてしまっています。読者に対して二つの終わりを提示しているのと同じであって、すこし受け入れがたいのです。

さて、作品が全部で11篇もあるので批判しか書けないような作品は割愛しようと思います。

『正義派』
路面電車が女の子を轢いた。現場は下り坂だった。しかし電車の運転士が電気ブレーキを早くかけていれば女の子は助かったかもしれなかった。野次馬の人混みの中で運転士への聴取がなされたが、あくまで不可避の事故であると処理されようとしていた。
そんななか、目撃者である3人の工夫がそれに異を唱え警察署へ証人として出向いた…

以前、模試か何かでみたことがあると思うのですが思い出せません。事なかれ主義への反抗とそれに負けてしまう人を描いたものでしょうか。

『清兵衛と瓢箪』
清兵衛は瓢箪を集めるのが趣味だ。ある日、それが勉学の妨げであるとされて打ち割られてしまう。ただ1つ割られずに残った瓢箪も父に没収され、ある小間使いの手に渡る。小間使いはその瓢箪を売ろうとするのだが…

好きこそものの上手なれということでしょうか。子どものやりたいことの邪魔をする親はいつでもいるものです。勉強だけが全てではない、というのはそう思いたいものですが実際はどうなんでしょうね。

『流行感冒』
「私」は自分の子である佐枝子を非常に大切に育てている。かつて最初の子が死んだからだ。ある時世間で感冒が流行りはじめた。「私」は子に感染させまいと小間使いにできるだけ人の多くいるところには行かないようにとのことづてをする。しかし、小間使いの1人は演劇へと足を運んでいるのではないかと疑われ…

「私」の小間使いへの感情の変化を追った作品です。「嫌な気持ち/良い気持ちをもった」で片づけられている部分が少しもの足りませんが、微妙なところなので仕方がないともいえます。といいながら、それを言葉にするのが物書きの仕事だろうとも少し思いました。


やはり長くなってしまいました。
[PR]
by nino84 | 2006-01-06 10:25 | 読書メモ