本の感想などをつらつらと。


by nino84
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『毛皮を着たヴィーナス』

『毛皮を着たヴィーナス』(ザッヘル・マゾッホ, 1871)を読みました。

さて、タイトルや作者を知っている人がいるのだろうか?どうせ中身にも触れることになるので、ここでネタばらしをしておきましょう。
ある科学者、クラフト・エビング博士が、ある性癖を持つ人たちを分類しました。分類の際、彼はそれと同じ性癖を描いた文学作品の作者の名を取りました。彼らの名は、マルキド・サドそしてザッヘル・マゾッホ。分類された性癖とは「S(サド、サディスト)」と「M(マゾ、マゾヒスト)」。そして、ザッヘル・マゾッホの代表作が、この『毛皮を着たヴィーナス』。

これでだいたいの内容は予想がついたと思います。ここから先は読まない方が良いかもしれません。とはいえ、個人的には最近言われている「M」とはちょっと、ちがうのではないかという感じを受けました。


さて、とりあえずあらすじです。
ある友人の家で、「私」は夢で見た光景と同じと思える絵を見る。「私」が友人にそのことを話すと、友人はその絵にまつわる自分の過去を書いた手稿を示した。彼は言う「女の君主になるか奴隷になるか、男には二つに一つの選択しかありません」と…。
かつて、男は毛皮の似合う美しい未亡人と出会った。そして、彼女に征服されることに、喜びを見いだした。彼は彼女の奴隷となり、奇妙な生活を始める。そして、その関係は1人の美しいギリシャ人の登場により新たな局面を迎える。


あらすじを書いてみたものの、なんかいまひとつ上手く書けていない気がします。ともあれ、まずひとつ注意を。それは、男が出会う美しい未亡人が決して「S」では無いということです。もともと、そういった性向が隠れていたのかもしれませんが、男がそう求めるので、それが表へ現れたということになっています。

男は自らの信条に照らせば、彼は彼女の君主にはなれないであろうことを感じました。だから、男は奴隷となることを選ぶ。所有されている限りにおいて、女は男を気にかけているということですから、それで良い、ということでしょう。後半登場するギリシア人も男の存在を気にかけます。奴隷がいる限り、女を自分1人のものにできないのですから当然かもしれません。
結末を言ってしまうことは避けますが、少し考えれば男と未亡人との関係はとても微妙なバランスの上で成り立っていることが分かります。女は、一方的に男を捨てられるのですから。ただし、男が捨てられるというスリルに快楽を感じれば別ですが、あまり理解したくありません。

ちなみに、毛皮とは権力の象徴です。中世から近世にかけての絵を思い浮かべてください。エカチェリーナ2世など時の権力者は毛皮をまとっています。自分は権力に支配されている、つまり、自分は奴隷であるということをより意識させてくれる道具だというのです。一方で、女性はそれをまとうことで権力者になるというわけです。
いつの間に毛皮がボンテージに変わったのでしょうね。毛皮が権力の象徴であったとすれば、ボンテージはそれに変わる権力の象徴なのでしょうか。もっとも、権力とか愛とかそういったことは考えずに、ただいじめられたいと思っているのが今の「M」なのかもしれませんね。


これ大丈夫か…?かつて無いほどに長い上に、かつて無いほどに濃い。
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by nino84 | 2005-12-06 10:30 | 読書メモ