本の感想などをつらつらと。


by nino84
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『蠅の王』

『蠅の王』(ウイリアム・ゴールディング, 1954)読みました。

新潮の100冊に入っているんで、書店でよく見かけたんだけど、表紙で敬遠していた…。少年文学として読めないこともないのにこの表紙はいただけない。内容は、少年たちが孤島で共同生活をするという、漂流もの。タイトルから内容が想像できないのもまた敬遠する理由に…。

とはいっても、ジュール・ベルヌの『15少年漂流記』とちがい、最後の数頁まで、まったく大人は登場しません。本当に子どもだけで生活していくわけです。


さて、人が集まれば、派閥ができるのが当然でしょう(学生の時、クラスメートすべてと平等に仲が良かったなんて事はないでしょう?いや、あるのかもしれませんが)。それでも、何とか一緒にやっていかなくてはならない。そうしたときには、普通、社会的な規範があるから、それに従って上手くやっている。では、その規範がなくなったら…?

子どもにとって、規範=大人とできるでしょう。しかし、無人島には大人はいません。子どもたちだけで、やっていかなくてはならないのです。
『15少年漂流記』でも同じような状態でしたが、本などの文化的なものが多くありました。一方、『蠅の王』では、文化的なものなどなにもありません。例外的に、ある少年のかけるメガネだけが、文化的なものでした。ですが、メガネは人に規範を与えるものではありません。文化的なものから、社会的な規範から離れていると、人はどうなるのか?

その答えとして、ゴールディングは、少年たちのイノセンス(無垢)を蝕む、獣性を描きました。無垢が失われ、獣性が子どもを飲み込むまでを描いたのです。人ってのは、そんなものですかねぇ…。
個人的には最後、大人と出会った瞬間に、「無垢が失われたのを、人間の心の暗闇を悲しみ、泣いた」ことが、せめてもの救いと見たい。人は獣ではないのだ、という救いに。
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by nino84 | 2005-08-10 10:45 | 読書メモ