本の感想などをつらつらと。


by nino84
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『蠅の王』

『蠅の王』(ゴールディング、平井正穂訳、新潮文庫)を読みました。

時は未来。戦争のために、イギリスから疎開する少年たちの乗った飛行機が孤島に墜ちた。大人は一人もおらず、少年たちだけでリーダーを決め、救助がくるまでの共同生活が始まった。当初は上手くいっていた共同生活だったが、蛇のような獣の存在を端緒として、次第に秩序は失われていく…


約半年で2度目です。諸事情あって、読み直しました。この半年で、何を知ったと言って、テレビアニメ『無限のリヴァイアス』のネタもとだと知りました。いわれてみれば、確かにその通りです。だからどうだというのではないですが、こういう作品が結局好きなのだ、と再確認したわけです。『無限のリヴァイアス』も好きなんですよ。


人間の心に巣くう暗いもの。理性に生きるのではない、人間の本能の部分。社会で、規範の中で生きている僕らにはそれを抑える術がある。
では、規範がなくなったら?外的に抑圧するものがなくなったとき、その時こそ人の暗い部分が最もあらわれやすくなるときであろう。さらに言えば、規範を失いやすいのは、より幼い人たちであるといえる。彼らには規範が、あるいは規範の意味が分からない。親から叱られることがなければ、それを意識する機会などはないに等しい。
従って、人の暗い部分を描くのには、漂流モノの物語が適していると言える。(本書の中では『珊瑚島』と比べられていたが)『十五少年漂流記』のように、少年がどのように危機から脱出するかを描くのではない。本書は規範のない危機そのものを描く。
この作品ではその危機は乗り越えられていない。もちろん理性の重要性を訴える少年もいる。しかし、その少年らは人の暗い部分によって追いつめられていく。そんな状況の中で、外界から救助が来ることで、物語は一応の終焉を迎える。理性は人の暗い部分を説得できないのだろうか。

さらに、人の内面の暗い部分の指摘のみに留まらないのがこの作品で、少年たちが漂流した原因が戦争という人の暗い部分の固まりであることにも、ある種の示唆が含まれていると見ることもできよう。ラストシーンで大人を前に泣きちらすボロボロになった少年と端正な巡洋艦とのコントラストは、暗い部分の力を誇示しているようでもある。


付録としてついている(?)解説があまりにも的確だと感じました。自分に肯定的に言えば共感といえなくもないですが、意見がそれに流されているのかもしれません。
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by nino84 | 2006-04-08 00:53 | 読書メモ