本の感想などをつらつらと。


by nino84
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『パルムの僧院』

『パルムの僧院』(スタンダール、生島遼一訳、岩波文庫)を読みました。

ファブリス・デル・ドンゴは、ナポレオンが活躍する時代に生まれた。彼は貴族の息子でありながら、ナポレオンに傾倒し、ワァテルローの戦いに赴く…。ここから始まる物語は、ファブリスを中心におきながら、パルムというイタリアの小公国を主な舞台として様々な側面を見せながら展開していく。


世間では、『赤と黒』とならびスタンダールの代表作と称されている作品です。どちらが優れているという判断はできないと思いますが、『赤と黒』の方がすっきりしている印象を受けます。『赤と黒』がおおむね、恋(に類するもの)を中心に置いているのに対し、『パルムの僧院』が戦争、恋、政争…、と中心に置かれるものが次々と置き換わっていくからでしょう。
作品の中により詳細な社会を感じられるのは『パルムの僧院』です。一方、『赤と黒』は主人公の心理面をより深く感じられるものとなっているように思います。

ただ、いずれの作品も、問題はそこまで衝動的になれる人間などいないだろうという点が指摘できる。小説であるから、それを是とすることはできるのだけれど、牢に入れられ、いつ殺されるか分からない状態で、それでも恋のために、牢にとどまろうとするファブリス。どれだけ、情熱過多なのでしょうか。
物語の中盤まで、彼は恋というものを知りません。ナポレオンに傾倒していたからでもあるし、保護者のようにして存在する女性が恋の対象であり、彼が母としてその人を認識していたからでしょう。
もちろん、ナポレオンへの傾倒がすごかったように、彼が恋に傾倒すればナポレオンの時と同様に何でもやるのです。したがって、決してファブリスの性格が破綻しているのではなく、あくまでそういう傾向が強い人物なのです。それを理解し、認識して読まないと情熱過多の馬鹿者が辺りを気にせずただ闇雲に何かに向かっている物語といえてしまう。もちろんそういう側面もあるのだが、彼の性格故に周りの女性は彼に惹かれるのだし、だからこそ良くも悪くも彼の周りには人が集まってくる。

この物語が成り立つのは、彼の周りに人が集まっているからである。彼の周りの女性が彼に惹かれて情熱過多になりがちなのには、その女性の描写を汲んでいかないと分からない部分はあろうが、決して理解し得ないものではない。
とはいうものの、やはり彼の性格を全面的に支持することはできないから、結局彼の周りの人物、とくにモスカ伯あたりに好感が持てたりもする。
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by nino84 | 2006-05-24 01:00 | 読書メモ