本の感想などをつらつらと。


by nino84
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『帰還 ゲド戦記最後の書』

『帰還 ゲド戦記最後の書』(ル・グウィン、清水真砂子訳、岩波書店)を読みました。

ゲドが大賢人として、アレンとともに西方へ向かっていたころ、テナーはゲドの生まれ故郷であるゴントにいた。彼女は結婚し、子をもうけ、普通の女としての生活を送っていた。また、彼女は虐待され、顔にやけどをおった小さな子どもを引き取り、テルーと呼んでともに生活していた。
そんななか、ゲドが遠く西の果てより生まれ故郷ゴントへと帰ってきた。しかし彼の力はすでに失われていた…。


ゲド戦記の4巻です。最後の書となっていますが、後に続編が出ていますので、実際には最後の書ではありません。本書は2巻でゲドに出会ったテナーとその養子であるテルーを中心にすえた物語が展開されます。
本文中で言及されて始めて気づいたのですが、アースシーでは魔法使いは男性であり、女性の魔法使いは存在しません。男性の力と女性の力は質が違うというのがその理由だというのです。ただ、まじない師の多くは女性なのだから、魔法使いになれないわけではないと思える。実際、テナーにはその可能性があったのだとゲドはいうし、その師であるオジオンも同様に考えていたようだ。しかし、テナー自身は魔法使いとしての生活を拒んだ。普通の女として、百姓の妻としてその一生を終えようと決心していた。

ここに見えるのは、フェミニズムだか、男性性と女性性とでもいえる問題であろう。男性からすれば力を持つのは男性のみでなくてはならない。だから女性の魔法使いを否定する。一方で、魔法使いとなれる素質を持つ女性自身もあえて難しい道を選択せず、女性として求められた生活をしようとする。
テナーはゴントで一時オジオンのもとで学んでいたが、それをやめ、妻となることを選んだ。ゲドと再開した後、彼女はその選択が正しかったのかと、悩む。彼女は自分でそう選んだのか、社会によってそう選ばされたのか、そこに自信がない。社会の枠の中から外れることは難しいことなのだろう。

一方でテナーはテルーを懸命に育てる。
テルーは本当の親に虐待されていた。テルーは親にも恐れられるような力を秘めているのだという。自分の子が自分の理解を超えている。自分の手には負えない。となればその子どもは悪いものであってこの世に存在してはならないものである。だから、虐待する。
テルーを引きとったテナーは母としての役割に逃げるようにテルーを育てる。それが自分の選んだ道だと自分に言い聞かせるように。といっても、そこにはやはり愛が見られるように思う。かつて自分も恐れられてきた。あれはつらいことだ。だからせめてテルーは普通に育ってほしい。そんな願いだったのかもしれない。
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by nino84 | 2006-06-15 10:39 | 読書メモ