本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「果てしなき多元宇宙」

「果てしなき多元宇宙」(筒井康隆、『時をかける少女<新装版>』角川文庫収録)を読みました。

暢子は史郎が男らしくないのが不満だ。なにせ史郎は不良にだってやられっぱなしで、何も抵抗しないのだから。
それでも、不良に蹴られた史郎の身を案じて電話をしようとした暢子だが、彼女を突然目まいがおそった。正気を取り戻した暢子が見たのは、ダイヤルが5つしかない電話だった…


多元宇宙ということで、パラレルワールドを扱った作品です。
人や物が持つなんらかの特性、性格といった属性は多くの選択の上に成り立ったものであり、その選択が異なれば、異なった属性をもったその人や物が存在した可能性がある。したがって、ある選択をした世界の「あるもの」がある属性を持ち、別の選択をした「あるもの」は全く別の属性をもつ。そうした決して本来なら決して交わらない世界が想定できる。
そういう異なった世界があるのなら、ある人にとって理想の世界というのが、どこかにあるのではないか。理想の世界にいられれば、それが良いことなのではないか。そう考えるのは、とても真っ当なことだと思える。

しかし、人やものがもつ属性はひとつではない。その属性は相互に関連を持っていることもありうる。その一部が変わるということは、総体としての人・ものが全く変わってしまう可能性がある。
それでもその一部が許せないのかい?好きな人・ものというのは、その全ての属性を包括して好きで、多少の嫌なところには目をつぶることができるものだろう。
それは人・ものに限らず、世界にだって言えることだ、すべての存在にいえることだ。何処か気に入らないところがあっても、それでも総体としてのある存在が気に入っているのなら、それでいいではないか。

そもそも理想なんてものは、考えただけのもので現実ではない。だから理想が現実になると、実は全く想定されなかった結果になることはありうる。理想が漸進的に現実に近づいていけば、どこかで理想を調整することができる。では、理想が突然に現実化したらどうなるだろうか?
おそらく理想は想定に対して行き過ぎたり、全く足りなかったりするのだ。それがパラレルワールドをまたぐということなのだろうと思う。

今いる世界のすばらしさを説いた作品…だと読んだ。
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by nino84 | 2006-08-15 23:53 | 読書メモ