本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「芋虫」

「芋虫」(江戸川乱歩、『江戸川乱歩傑作選』新潮文庫収録)を読みました。

須永中尉は戦争で大きな怪我を負った。そして、彼はその怪我によって、妻である時子なくしては生きていけない体になってしまっている。一方、時子は夫である須永中尉を献身的に看病しているというので、まわりから褒めそやされてはいるものの、内心ではそれを素直に受け入れられないでいた。
ある日、時子はその偽善に耐えられなくなり、我を忘れ、夫の唯一の感覚器であった目をつぶしてしまう。彼女は夫にわびるのだが、彼は「ユルス」という書き置きを残して自室から消えていた…



今までの作品よりも、随分キツイ作品になっています。ラストの中尉の姿を想像すると、とても怖い。
彼の心はどこまでも妻を愛し、感謝し、とても人間らしいものである。しかし、その姿の描写が強烈すぎて、彼の心を忘れてしまうくらいのものであった。

中尉は、戦争で傷を負ったということになっているのだが、現代ではそれを想像するよりも、別のプロセスで同じ結果になっているのを想像する方が易しい。端的に言えば、先天性の障害、事故による障害といったものである。
そうした状況にある彼らを、僕は人間としてみようとしている。もちろん、そうみていくべきであるとも思っている。
しかし、本当の極限状態にあって、僕は彼らを人間として捉えることができるのだろうか?僕は、彼らの努力している姿をこそ、どこか一歩ひいてみているのではないか、とふと思うのである。
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by nino84 | 2006-08-31 16:38 | 読書メモ