本の感想などをつらつらと。


by nino84
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

『あらくれ』

『あらくれ』(徳田秋声、岩波文庫)を読みました。

実の母に疎外され、幼い頃から養父のもとで育ったお島は18歳になろうとしていた。
養父の甥にあたる作という男との縁談が進んでいるという噂であったが、お島はそれを肯んぜなかった。世間体があるから、と周囲は縁談をすすめていくが、結局、結婚当日になってお島はその家を飛び出してしまう…。



お島はいつも体を動かし、働いていなければ気が済まない。加えて、自分の主張をはっきりとする。商売が順調なとき、彼女はとてもよい働き手である。その主張の強い性格も客とのコミュニケーションを上手く取るのに役立ってくれる。
しかし、商売が滞っている場合には、その主張がどこか現実感に欠けているために、周囲と衝突する。そうすると、女という弱い立場にいるお島は妥協せざるを得なくなる。その結果、作との縁談のように、状況に流されていくことになる。
庶民の商売などは、浮き沈みの激しいものだから、彼女は周囲との衝突を繰り返し体験することになる。そのたびに、どこか別の場所へ移り住んで、人間関係をリセットして商売をやろうとするのだが、資本がなければ商売などできるはずもなく、お島はしがらみの中で生きていくしかない。

基本的には、同じことを繰り返しているに過ぎないのだが、いろいろな所を転々としているだけに、その関係者だけは広がっていく。お島の生活は大抵厳しいのだが、その周りにしても楽に生きている人などいない。ひさしぶりに知った家を訪れれば、土地は抵当に入っているというし、某は死んだという。救いようのない庶民の苦しい生活が淡々と描かれている。
[PR]
by nino84 | 2006-09-13 16:55 | 読書メモ