本の感想などをつらつらと。


by nino84
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『図南の翼 十二国記』

『図南の翼 十二国記』(小野不由美、講談社X文庫)を読みました。

十二国のひとつ、恭国は先王が倒れて27年。次代の王はあらわれず、国は荒廃していた。
恭国の首都である連檣で、一人の少女が国を憂う。なぜ王がいないのか、と。彼女は名を珠晶といった。彼女は自分が王の器であるかを確かめるため、それが苦しく、長い道のりであると知りながら、昇山することを決意する。



講談社文庫からも同じ作品が出ているのですが、山田章博さんの表紙のイラストが好きだったり、第一巻をこっちで買ったというのもあって、X文庫で買いそろえてます。

で、なぜ今回第一巻でなく、突然番外編を読んでいるのかと言われれば、この作品が一番好きで、なんとなく読み返したくなったから。それにしても、こういう設定ありきのファンタジーというのは、『ゲド戦記』がそうであるように、現実のある一部をクローズアップできるから、時にとても示唆に富む。ただ、その設定の部分で躓くことが多いから、一長一短ではある。
ちなみに、映像作品で言えば、『ラーゼフォン』の「ブルーフレンド」、『∀ガンダム』の「ローラの牛」といったエピソードも同じようなものでしょうか。『∀ガンダム』は他にもこれはと思うエピソードがいくつかありますが…。話が本から離れていきそうなのでこれ以上はやめます。

本書について言えば、富んだものの貧しいものに対するまなざしについて、とても考えさせられる。
もてるものは、日々の食事に困らず、飽食の状態にあり、人を使役もする。しかし、もたざるものは、その日の食事に困り、身の安全さえも危うい。もてるものは、もたざるものを雇って、もたざるものを救うというのだが、それはもてるものの都合でしかない。
だからといって、もてるものがその食事を質素にしたからといって、もたざるものに還元されるわけではない。もてるものの懐にお金が残るだけ…。また、もたざるものの一部を助けようと思えば、結局すべてを助けなければならなくなって、それは無理だと気づく。
こうやって自宅で自分のPCをもって感想を書いている自分がいる一方で、外で風雨をしのぎながら寝てる人がいる。そういうのとどこが違うのだろうか。もっといえば、日本と世界の関係だって似たようなものだ。もてる飽食の国日本と、もたざる飢える国(例えば、アフリカの国々)。


とにかく、この作品、設定を理解しないことにはスタート地点に立てません。その設定も、「十二国記」というシリーズを通して形成されている。だから、この作品だけを読んで、この作品が理解できるかと言われると、難しいと言わざるを得ない。王と麒麟の関係、王と国の関係、あるいは世界の成り立ち。こうしたものは、一連の作品の中で詳しく語られ、この作品で改めて詳しく語られない部分は多い。シリーズ第一作『月の影 影の海』は導入としてもよい作品―主人公は女子高生で、異世界に迷い込むという形だから、十二国の世界を主人公と読者が同時に学んでいける―なので、まずそちらを読むことをおすすめします。
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by nino84 | 2006-09-14 01:12 | 読書メモ