本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「華胥」

「華胥」(小野不由美、『華胥の幽夢 十二国記』講談社X文庫収録)を読みました。

才国の麒麟、采麟は病んでいた。それは王が失道したという証であったのだが、側近たちは、王の成す政のなにが間違っているのかつかめない。
そんななか、采王の父―その位を太師という―が殺されたとの知らせが入る。同時に采王の弟、馴行の行方が分からなくなった。果たして誰が太師を殺したのか、馴行はどこへいったのか…



突然ミステリ調の作品です。早々にある人物が状況証拠は真っ黒、動機は灰色という状態になり、動機の部分を中心に話が進んでいきます。ですが、国が傾いた状態での出来事ですから、当然そのあたりの状況との絡みがあるわけで、そのあたりの読者へのメッセージは分かりやすいものなのではないでしょうか。

王には能力、人柄、人望、理想…そういったものの総体として天に名君になりうると思ったものだけが、選ばれる。しかし、王も人だから間違うのは仕方がない。でも、たとえなにかを間違ったとしても、王をやめることはできない。それはただ一人、天に選ばれたものだからだ。
采王は理想を高く持ち、それを一途に追い求めた。しかし、彼は政には全くの素人であった。
「先王は税を重くしすぎたから、税は軽くしよう」、「宮中には賊臣がはびこっているから、彼らを片端から罷免しよう」。こうした政策は、一面では正しい。でも、それで国庫が不足し、国が組織として回らなくなれば、状況は悪くなる一方だ。にもかかわらず、高すぎる理想はそれを断行し、結果として間違った政策となった。
采王は先王を倒して立った。しかし、采王は「先王の否定という理想」しかもてなかったのではないかと疑問を呈するものがあらわれる。その人は批判することの難しさを知った。だからこそ、自分を省みることもできた。

組織の規模が大きくなればなるほど、それを運営する人には広い視野が求められる。中国の蝶の羽ばたきがアメリカで竜巻を起こす、ではないけれどちょっとしたことで思いかけない所に大きな影響がでることだってありうる。それを想像する力が必要だ。とすれば、それを批判する側にも、それを想像する力が求められてしかるべきである。なぜなら、批判する人も組織を運営する人であるから。


「間接民主制である日本では、選挙を通してではあるが国民一人ひとりが組織を運営する人であろう。しかし、その多くは大衆となり、考える力を失ってきているようにもかんじられる。規模が大きくなれば、それは仕方のないことだと言えもするのだが、本当はいけないのだろうな…。」という批判がふと思いついたものの、それをどうやって改善するのかという案が浮かばないだけに、本来なら、書くべきではないのだろう。
とはいえ、批判だけならこうも簡単にできるのだ。だからこそ、批判の対象となる物事の原因や影響を深く考えることが難しいのだし、それは意識的にしていかなければいけないことなのだろう。
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by nino84 | 2006-09-18 19:12 | 読書メモ