本の感想などをつらつらと。


by nino84
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『月の影 影の月 十二国記』

『月の影 影の月 十二国記』(小野不由美、講談社X文庫)を読みました。

中島陽子は、毎日嫌な夢をみる。遠くから、大きな鳥や猿といった化け物が自分に迫ってくるのだ。その化け物との距離は日に日に近くなっていく…、そんな嫌な夢をみる。
そんなある日、彼女は学校で不思議な男にであう。彼があらわれるのに合わせたように、陽子の周りでは異変が起きる。彼は陽子を守るため、といいながら、彼女を異世界へと導く…



シリーズものは読み始めると止まりません。また十二国記です。第一作に戻ってきました。基本は、主人公が別の世界に迷い込むという作品です。主人公と同じ立場に立って情報を手に入れることになるので、はじめから異世界でスタートするファンタジーと違い、比較的感情移入はしやすいかと思います。また、上下巻ですが、上巻は内向的な陽子の性格も手伝って、かなり暗く仕上がっています。
異世界に一人、迷い込む。海客―いわゆる異邦人―だからと差別され、化け物には襲われる。彼女を異世界につれてきた男の正体は知れない…。もとの世界には戻れるか分からない。この状態で暗くならないのはよほど単純な思考の持ち主か、冒険好きでしょう。MARとか、MARとか、MARとか…。

よく分からない場所に一人。助けはない。たまに優しさに触れても、裏切られる。だから、人を信じなくなる。裏切られることのないよう、人と交わらず、一人で生きていく。それが自衛の手段だった。ある人物に出会うまでは…。陽子はその人物に出会って、異世界で初めて友人と呼べる人を見つける。それが、彼女の考え方をポジティブに変えていく。
いくら人を拒んでいても、結局ひとりでは生きていけない。もちろん、期待通りにならないこともあろう。しかし、たとえ裏切られても、「自分がなにか損なわれる訳じゃない」、こういう割り切りかたさえできるようになる。
自分がなにも人に与えず、自分だけ何かを得ようとするのはおかしい。それは自己中心的に過ぎる。他人を強制はできないが、自分は律して立つことができる。だから、少なくとも自分だけは正直に生きようとする。陽子がそのような決意ができたのは、人との関わりがあったからだろう。ひとりではそこにたどり着くことはないと思える。

「情けは人のためならず」、そんな作品。
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by nino84 | 2006-09-21 21:50 | 読書メモ