本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「耳の価値」

「耳の価値」(安部公房、『R62号の発明・鉛の卵』新潮文庫収録)を読みました。

ある大学生が無実の罪で拘留された。留置場からでたものの、彼にはお金の工面ができず、授業料滞納による退学の危機が迫っていた。そこで同級生とお金を工面する策を立てたのだが…


なにも罪を犯していなくても、捕まってしまうことはある。それを警察の杜撰な捜査のためだとするとか、運のためにするとか、そんなことはどっちだっていい。不条理につかまることだってあるのだ。
一方、世の中には法律違反ギリギリのことをやって捕まらない人間がいる。場合によっては法律に反しているのかも知れない、そんな人間がいる。

後者を世渡り上手とすることは簡単だし、それをやるとなかなかに儲かるのもそれなりに理解できよう。法律の抜け穴をみつけるのは、それ自体が金儲けのたねなのである。
だからといって、それは法律違反ギリギリの行為であることに変わりはなく、一歩間違えれば間違いなく捕まってしまうのである。それは認識しておかなければならない。たとえまわりにそうした行為をしている人がいたとしても、それを見て自分もできる、と思うのは間違いであろう。
人は法律の抜け穴をその周辺まで詳細に知っているかも知れない。しかし、それを見た人が分かるのは、法律の抜け穴そのもの、ただそれだけであることが多い。

本作では、保険の倍率が法律の抜け穴の周辺と言うことになる。体のどの部分の欠損にどの程度の倍率が掛かっているのかは一覧できるから、よく分かる。しかし、その倍率の意味を知らなければ、保険に関する法律の抜け穴を有効活用できないだろう。


とはいえ、本作は別段法律の抜け穴を強調しているわけではない。むしろ、一つの現象だけではなく、その周辺のことがらについても広く見ていくことが大切である、としているように見える。
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by nino84 | 2006-10-16 23:59 | 読書メモ