本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「鉛の卵」

「鉛の卵」(安部公房、『R62号の発明・鉛の卵』新潮文庫収録)を読みました。

古代炭化都市層から、全長4.5メートルほどの鉛の卵が発掘された。なんでも80万年前の冬眠箱らしい。
その卵が町中に移されて4日目、卵の中から古代人が現れた。その古代人が最初に見たのは緑色の肌をした植物のような人間であった…。



古代人は、我々と同じ人間である。彼が80万年の眠りから覚めたとき、目の前には同じ姿をした人間はおらず、姿も習慣も異なる人間がいるだけであった。
昔と全く違う環境に突然放り込まれて、古代人は困惑する。緑色をした人間とも話ができるようになって、その文化や習慣についてのはなしを聞き、何とか理解しようとするのだけれど、どうもなじめない。それでも初めのうちは待遇も良いので、上手くやっていけそうであったが、文化や習慣を詳しく聞くにつれて自分の文化や習慣との相違が目立つようになってくると、そうはいかなくなる。

こういうことは僕らの世界でもあるわけで、留学などをしたときの状況がこれにあたるだろう。まわりはすべて現地人で、自分一人が異文化を背景に持っている。最初のうちは、表面的な違いしか見えてこず、それなりにやっていけそうだと思うのだが、長く滞在しているとそれだけで不適応をおこす可能性は高くなる。それは先書いたのと全く同じ理由で、滞在先の文化と自分のもつ文化の根本的な相違が目につくようになるからだろう。
こういうことをSFの世界で扱うと、本作のような作品になるであろうことは想像に難くない。

もちろん、海外留学したときの不適応感などは時間が経てばそれなりに自分の中で折り合いをつけられるようになり、解決されるものということもできるが、場合によっては不適応状態のままいかんともできなくなる場合がある。そうなった場合、海外留学の場合であれば、もちろん帰国するだけのことだ。そうすることで文化の相違という原因がなくなり、不適応ではなくなる。
さて、では本作のように戻ることができなかったらどうだろうか?

結末は作品を読んでもらって楽しんでもらうことにしましょう。不適応どうこうと、難しいことを考えなくても十分に面白い作品だと思います。
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by nino84 | 2006-10-17 23:59 | 読書メモ