本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「あるいは酒でいっぱいの海」

「あるいは酒でいっぱいの海」(筒井康隆、『日本以外全部沈没 パニック短篇集』角川文庫収録)を読みました。

おれは酸素をヘリウムに作り変える薬品を発見した。これは使えると思い、早速海に出て実験を試みさせたのだが、その際、薬品を海に落としたという…


たった4ページの掌編。そのなかでものすごい勢いで世界が変わっていくのは、さすがパニック短篇集。かなりのスピード感である。

そもそも酸素からヘリウムをつくるということはできるわけがないのだが、そんなことはどうでもいい。ちなみに、当初の予定と実は薬品の効果が違うこと―副作用とか―は、よくあることのような気がするので、その辺はよし。
人間できたものの都合の良い部分しか見ないもので、なかなかそのほかの部分にまで目が行届かない。特に、その良い部分が大きければ大きいほど、その傾向は強いだろう。だから、薬品の都合の良い部分だけに目をつけて、早速使用してみようとも思うのだろう。
さらに、その失敗の中からなにか良い部分が現れれば、やっぱりその部分にしか目がいかず、近視眼的になってしまう。それは先の傾向に加え、さらに失敗から成功、負から正という評価の転換によって、効力観がいっそう高まるからだともいえよう。
それによって、人は過ちを繰り返す。それによって、人は命を失うかもしれない。

というように、すこし無理して解釈してきましたが、そんなこと考えずにすらすらと読んでしまってもいいんじゃないかな。科学の法則が不条理だからこそ、面白い作品なんだから。
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by nino84 | 2006-10-19 11:39 | 読書メモ