本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「ヒノマル酒場」

「ヒノマル酒場」(筒井康隆、『日本以外全部沈没 パニック短篇集』角川文庫収録)を読みました。

ヒノマル酒場には、常連がやってきては遅くまで飲んでいる。今日もそんな状態だったのだが、どうも周りが騒がしい。テレビでは通天閣のうえにUFOが来たと放送している。
ヒノマル酒場の面々はそれをドラマだフィクションだといって相手にしなかったのだが…



テレビのニュースは、もちろんニュースだから現実を視聴者に伝えることが目的だ。しかし、視聴率を上げるために、ニュースでさえ映像を工夫し、現実感が乏しいものになってしまう。現実は歪められ、より過激なものに見えてくる。

そんな状況の中で、その危険性を感じていれば、なんとなくそれをさっ引いてテレビを評価しようとする。しかし、現実に超現実のことが起こった場合には、それさえもノンフィクションだろうと断定してしまうことだって―よほどのことがないかぎりありえないだろうが―あり得る。
よほどのことがないかりぎり起こりそうにないとはいったものの、そういった場面が想像できるというのなら、それが作品として成り立つ。ありそうではあるのだけれど、ないことを書く、そんな作品。

と思って読んでいると、終わりがけに思いがけない展開が待っていて、すべてを持っていってしまう。「収集がつかなくなりましたハハハ」という感じ。いや、むしろ「収集つける気などありません」という感じ。それがつまらないのではなく、「かくしてヒノマル酒場は閉店した。」という一文でスパっと終わるのが面白いのだ。
前半はゆっくりただの酒場の一場面だったものが、だんだんと現実離れしていき、最後に収集がつかないほどに盛り上がる。それを「かくして…」といって一気にしめることで、嵐の後の静けさというべきものがあって、その静寂がまた面白いのだろう。
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by nino84 | 2006-10-20 21:00 | 読書メモ