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本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「日本列島七曲り」

「日本列島七曲り」(筒井康隆、『日本以外全部沈没 パニック短篇集』角川文庫収録)を読みました。

おれの乗ったタクシーは渋滞に巻き込まれた。急がなければ明日、大阪である自分の結婚式に間に合わない。仕方ないから、飛行機で大阪まで、と思ったのだが、その飛行機がハイジャックされて…


今の生活に完全に満足できないから、それから逃げたいときもある。そういうなかで、自分の力ではそこから逃れられないと思うから、そのまま今を懸命に生きているのだろう。
では、今の生活から逃れる機会を外からあたえられたらどうだろうか。自分で逃げたのではなく、仕方なく逃げざるを得なくなったのだという理由づけさえあれば、どこへでも逃げたいと思ってしまうかもしれない。
赤軍によるハイジャックは、そういった理由づけにはうってつけの事件だった。だから、飛行機に乗り合わせただれもがその事件の被害者になりたがり、よくわからない空の旅が始まる。

僕は70年代当時の学生闘争など知らないから、彼らがどの程度の思想をもち、どの程度本気で、どの程度のことをしたのか、詳しくは知らない。「よど号」、「浅間山荘」、「安田講堂」といくらか関係した名詞が浮かぶくらいなものなのである。だから、彼らがただ現実から逃げたいために運動をしていたのか、本当に現実を代えようと思っていたのかの判断はできない。ただ―やっていたのが学生なだけに―見方によっては現実から逃げたかっただけではないのか、と思ってしまう。
この作品の赤軍は、当初北朝鮮に行けといいながら、そこを断られると、次々と目的地を変えていく。それで、結局手詰まりとなり、日本から逃げること叶わず、むしろどこにも行き所を失い、孤立してしまう。現実から逃げようとして、現実からも理想からもはじき出されてしまった人たちはどうすればいいのだろう。
もう少しまっとうに生きましょう…?


さて、なんどもいっているようですが、一連の作品は『パニック短篇集』です。ですから、大風呂敷をひろげ、それを収集する気がないというところをお楽しみください。

僕は、かなり無理して感想を書くテーマを拾っています。
by nino84 | 2006-10-22 22:16 | 読書メモ