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本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「新宿祭」

「新宿祭」(筒井康隆、『日本以外全部沈没 パニック短篇集』角川文庫収録)を読みました。

LSD、無法者組成企画社。おれはそこの社員だ。政府やらなにやらからゲバルトの注文を受け、それを時間通りに派遣するのを仕事にしている。明日は新宿祭。今日はその準備でもって一年でもっとも忙しい時だ…


ゲバルト【(独)Gewalt】 
《力・暴力の意》主に学生運動で、暴力的手段を持ってする闘争。ゲバ。

なるほど。そういうものなのか。完全に死語ですね。ちなみにyahooの辞書検索の結果です。結局、検索を掛けなければ言葉の意味する所が正確に飲み込めませんでした。「日本列島七曲り」もそうでしたが、これも学生闘争当時をネタにした作品です。

実際、あれだけ学生運動が大きくなったのは、一部の活動家に大衆が乗せられたとしか思えません。もちろん、本当に目的をもって活動していた人たちもいたでしょう。しかし、運動していた学生の多くは、意見をもたない大衆だったのではないでしょうか。当時を知っているわけではないので、本当のところはどうなのか分かりませんが、一種の流行だったのではないかと、思ってしまいます。

これ以降は仮定の上に仮定を老いていくことになりますが、一種の流行だったとすれば、そのうちにその活動が大衆化し、本来の意味―体制をかえること?―をなくしていくかもしれない。そうなったとき、それはストレス解消の場ととられてしまっても仕方がない気がします。
政府としても、体制が転覆する危険性はないのだから、年に一度のストレス解消の機会にしてしまおうくらいの考え方をする。すると、今回の作品の世界になる。

この作品は学生運動が始まった時代から、ずいぶんたった時代という設定ですが、実際に学生運動の意味が失われるのにはそんなに時間は掛からなかったのではないでしょうか。―それでも年単位で掛かったのですから、当時としては長い時間だったでしょう―
どのタイミングでこの作品が書かれたか調べてはいませんが、学生運動当時だったなら、そこには「お前ら、もう一度その活動の意味を考えてみろよ」くらいの力は合ったかなと思います。もちろん、バカにするなといって殴り込みにでも来そうな作品でもありますが…。あるいは、学生運動終演後であれば、「あのときのお前らはバカやってたなぁ」くらいの作品でしょうか。この場合は過去を笑い飛ばそうという作品ですね。
どちらにしろ、もう一度見直してみたら実は本質が失われていた時期があったのではないか、と思わせる作品ではあります。
by nino84 | 2006-10-23 20:28 | 読書メモ