本の感想などをつらつらと。


by nino84
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『マルドゥック・ヴェロシティ』

『マルドゥック・ヴェロシティ』(冲方丁、ハヤカワ文庫)を読みました。

戦時に友軍への誤爆という罪を犯したボイルドは軍の研究所で肉体改造をされた。その施設で出会った万能ネズミ、ウフコックが、傷ついた彼の過去を癒す。
しかし、戦争が終結し、彼らの価値が失われた。彼らに選択の時が迫っていた…



数年前に出版された『マルドゥック・スクランブル』以前を描いた作品です。ちなみに、『…・スクランブル』はまるで戦闘をしているかのようなカジノの描写でSF大賞を獲得した作品です。グロイ描写が比較的少ないので、『…・スクランブル』はお勧めします。

というわけで、『…・ヴェロシティ』です。こちらは、カジノがメインの作品というわけではなく、かなり激しい戦闘が繰り返し行われる作品です。一方で、重厚なミステリのような雰囲気をもかもし出すので、かなり濃い作品であるように思います。
また、文章も独特のものであって―前作でもそうでしたが、それ以上に―個性が出た物になっています。スピード感を感じる一方で、癖が強すぎ、多少の読みにくさを感じました。全3巻ですので、さすがに途中で慣れてはきますが…。

さて、先ほどもすこし触れましたが、この作品はミステリでもあります。しかも登場人物の多さ、さらにはその活動範囲もかなり広いために、答えはかなり深い闇の中にあります。
しかし、SFであり、かなりスピードを重視した文体であるために、ミステリをミステリのように読ませないような雰囲気をかもし出します。すなわち、なにがどうなったのか分からないのだけれど、このスピードで読み続けたいと思ってしまうわけです。結局、僕は後の展開を考えもせずに、全3巻を走り抜けました。

ボイルドの思考を追うという意味であるならば、走り抜けてよかったと思います。これをまともにミステリとして読みたければ、おそらく文体に逆らいところどころで立ち止まることが必要でしょう。また、一度読むとそれで犯人が誰かということがわかってしまうため、まずゆっくり読むのもよいでしょう。

以上は文体と展開についてです。SF+ミステリですので、かなり男性向けに書かれているとは思います。
また、拷問などの残酷描写も多いので、やはり男性向けなのかなと思います。それこそ、ボイルドの思考・感情のみを追っていくのであれば、女性にも読めるのかもしれませんが…


結末は『…・スクランブル』に繋がるということが決まっているために、当初それなりに落ち着くところに落ち着くだろうと思っていたのですが、結局最後まで緊張を保って読めました。
終盤でもう一つギアが上がるのもポイントなのでしょう。
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by nino84 | 2006-12-09 22:28 | 読書メモ