本の感想などをつらつらと。


by nino84
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

『日本沈没』

『日本沈没』(小松左京、小学館文庫)を読みました。

小笠原諸島の北に位置する小島が一夜にして水没した。その原因を調査するため、調査班が組まれ、その海域の調査をすることになったのだが、その海底で驚くべき現象を目撃する。
、時を同じくして、全国各地で地震や火山の噴火が続き、日本に不気味な影をおとす…。



ずいぶん前に『日本以外全部沈没』(筒井康隆)を呼んだのですが、こちらを読んでいなかったので、読んでみた。
現実に日本が沈没するなんてありえないと思いながら、それでも―空想の理論を交えながら―理論的に整合性をもたせようとしているため、真剣に読むことができる。それにしても、同じようなことを書くにしても、一方で筒井康隆さんのようにギャグにだってできてしまうのだから、SFという作品は本当に幅が広いと思う。
そういえば、友人が「SFは仮定をもとにしたシミュレーションだ」といっていたのを思い出す。そのシュミレーションの方向性一つで作品が全く変わってしまうのだから、面白い。

さて、本作はタイトルどおり、日本が沈没していく過程を描いた作品です。「もしこうなったら、どうなるだろう?」というシミュレーションをするSFなので、最初から最後までそれを前提にして読めばいい。ミステリならタイトルをなんとかしてぼやかすのだろうが、SFなので結論が見えようが全く問題ない。
異変がどのように発生するのか、また異変を発見したが、予見される危機をどうやって発表するのか、というシュミレーションから始まり、国民はどうやって、どこに避難するのか、さらには日本という国がなくなることで世界にどのような変化が起こるのかといったシュミレーションまで、実にしっかりと書いている。さらに、そうしたマクロな視点でSFだけを書くのではなく、人物も一人一人描くことで、ミクロな視点での純粋に冒険小説的な読み方もできるように思う。
また、シュミレーション事態があまりに突飛かといえば、そうでもない。作品中では地震による年への被害が幾度となく描かれるが、それはまるで阪神・淡路大震災を思い出させる。また、東海・東南海地震の同時発生は最近になって可能性が0ではないといわれている。このようなシミュレーションの意味は、実際に起きたあるいは、おきそうな場合に、人の想像力を助けるということだろう。

それにしても、実にさまざまな要素が絡み合った大作になっている。要素としてSFだけではないから、SFを読んだことのない人でも楽しめるだろう。また、SFといっても宇宙を舞台としているのではなく、まったく身近なところが舞台となっているので読みやすいだろうし、加えてそれでも本格SFなのだから、SFの入門書として十分すぎるほどの作品でもあると思う。
[PR]
by nino84 | 2007-01-13 12:15 | 読書メモ