本の感想などをつらつらと。


by nino84
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『パラサイト・イヴ』

『パラサイト・イヴ』(瀬名秀明、新潮文庫)を読みました。

永島利明の妻、聖美は交通事故が原因で亡くなった。大学で生化学の研究をしていた利明は、ひそかに妻の肝を入手し、取り付かれたようにそれを培養し始める。また、利明は培養を進めるかたわら、妻の腎臓を移植することを認めた。
…果たして移植は果たされたが、移植された患者は奇妙な感覚に襲われる。時を同じくして培養されていた肝にも異変が起きていた。



大学のテストが終わり、春休みに突入したので、更新再開です。

さて、本書は瀬名秀明さんのデビュー作ということで、比較的古い作品なのですが、このたび新潮文庫から新たに刊行されたようです。以前からタイトルだけは頻繁に聞く作品だったので、読みたい作品の一つだったのですが、これを期に呼んでみることにしました。

以前のレーベルは角川ホラー文庫ということですので、分類としてはホラーという認識なのでしょう。確かに怖いのですが、それと同時に理論的でもあるので、どこかSF的な空気も感じます。『リング』(鈴木光司)のような呪いのおどろおどろしい怖さではなく、科学的に「なんとなくありえそうだ」と思える作品になっていると思います。
科学的なものをホラーに落とし込むというのは、科学それ自体がかなり理論的なものであるために、恐怖を呼び起こしにくいというきもするのですが、そこは生化学。遺伝子など、かなりの魔法のアイテムがあるのでなんとかなってしまうのでしょうね。もちろん、どこまで現実に従い、空想をどこに放り込むのかによって、ずいぶん作品の様子が変わってくるのでしょう。この作品では、基礎的な部分ではしっかりと現実を扱い、そのもうひとつ上の段階で空想を織り交ぜているようなので、かなり理論的にしっかりした展開が出来ているように思います。
理論的に展開がされてきて、突然それを超えたところに放りだされるので、そのあたりの落差がかなりの怖さを感じさせるのでしょう。

あとがきで触れられてもいましたが、そういえばこういう研究者を主人公にした話というのはあまりみませんね。専門用語が乱れ飛ぶ、小難しい話になってしまう恐れがあるということなのでしょうが、この作品について言えば、注釈はもちろん必要であるものの、それほど気にすることなく読むことができたと思います。
この点については、理解できなくてもそれはそれで魔法みたいにみえて、結局のところ、作品として成立する部分が多いからこそか、とも思ったりもしますが、正確な理由はわかりません。
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by nino84 | 2007-02-14 00:46 | 読書メモ