本の感想などをつらつらと。


by nino84
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

『卍』

『卍』(谷崎潤一郎、岩波文庫)を読みました。

柿本園子は技芸学校で徳光光子とのあらぬ噂を立てられ、そのことを通じて知り合った。それから二人は次第に深い関係になっていった。この時、園子にはすでに夫がおり、一方の光子もまた家のしがらみに縛られていた。それでも二人は園子が光子を自宅に招待した時に、とうとう…。


結果的に同性愛が中心になっている作品を2作つづけて読むことになりました。しかも「ミシン」(嶽本野ばら)同様、女性の告白体による作品です。特に意識して選んだわけではないのですが…なんなんでしょうね。

さて、本作ですが、先に述べたとおり、女性(柿本園子)の告白体で書かれた作品です。舞台が大阪なので当然しゃべりことばである上方方言をもちいて書かれています。関西圏に住んでいないので、読み始めはすこし読みにくいという気もしました。ただ、意味がわからないというレベルの方言ではないですし、最近ではテレビでいやというほど関西の芸人さんが関西弁で話しているので、読みなれてしまえばこれはこれとして読めると思います。
発音を忠実に文字に起こそうとするので、音の伸ばし方、つなぎ方が最後まで分からないものもあるにはあったのですが…。

内容についてですが、同性愛を中心に据えてはいるものの、結局描いているものは、人と人の関係の中で猜疑心や信頼感やが生まれては消えていく、そういった不安定な関係なのでしょう。園子と光子の関係を中心に据えて物語が進展するために同性愛が関係の代表という形になってはいますが、園子は結婚し夫婦関係をもっていますし、光子は男性との結婚の話をもちかけられています。こうしたすべての関係が実に不安定であって、一つの出来事でガラリとその形が変わってしまう。関係が変わることで、人そのものも次第に変わっていってしまう。
こうしたことが描かれていくので、先の「ミシン」のように愛のかたちそのものを書こうとしているわけではないと思います。恋愛という枠ではなく、もっと大きな枠、人間関係のかたちを囲うとしていたのかな、と思ったりしました。それが実に不安定なんだということなのでしょう。
[PR]
by nino84 | 2007-10-12 19:01 | 読書メモ