『ツインズ 続・世界の終わりという名の雑貨店』
2007年 10月 26日
『ツインズ 続・世界の終わりという名の雑貨店』(嶽本野ばら、小学館)を読みました。
君がこの世界から肉体を消滅させてから、ずいぶん経ちました。それでも僕は、君のことを過去として整理できずにいます。
君に向けて書いた文章は、編集者の目にとまり、『世界の終わりという名の雑貨店』という題名で、出版されることになりました。僕は、出版を期に、京都から東京に居を移しました。そして、ある日、教会で彼女に出会ってしまったのです。
嶽本野ばらさん、再び。
本作は『ミシン』に収録されていた『世界の終わりという名の雑貨店』の続編にあたります。魂の双子としていた女性を失い、かなしみに暮れてる「僕」のその後を描いています。前作同様、淡々とした文章ではありますが、どこか罪悪感とでもいえるものが全編に流れているように思います。もっとも、前作を読んでいるために、冒頭の文章に引きずられた僕の感情が、全編に投影されてしまい、そのように読めたのかもしれません。
とはいえ、序盤を読んでいる段階で、全編がかつて失った女性に対する語り口調で進んでいくのかと思いましたが、そうでもありませんでした。かつて失った女性の死を受け入れ、未来に進んでいく、そのように読めば意外と健全な作品なのかもしれません。
かつて失った女性が魂の双子なら、本作で出会った女性は「僕」の存在の双子なのだと訴えます。それは同じように何かを失い、そのために感じた感情を互いに感じあい、分かり合えるからなのだとも。
彼女は「僕」を求めていました。「僕」も何者かを求めてはいたのでしょう。しかし、「僕」は彼女をどこまで受け入れるべきかを迷います。「僕」はかつて失った彼女を忘れられない。それに加えて、彼女を求めたところで、同じ結果になることが怖かった、ということもあるのでしょう。しかし、彼女の状態が悪化し、本当に「僕」なくして生きていけないような状態になってしまったとき、「僕」以外に彼女を救えない状況になってしまったとき、「僕」は決断をします。
「僕」の生き方としてはそれでいいのでしょう。彼は後悔しないことを選んびました。かつての彼は行動せずに後悔しました。だから、行動することは、彼なりの成長でありましょう。
過去があることと過去に縛られることは違います。彼が体験したことは、過去は過去である、という単純な割り切りかたができるような出来事であったとは思いません。だからこそ、この物語があり、彼女との出会いがあり、それをきっかけに彼はかつての喪失体験を乗り越えた。表面で起こっていることがあまりに極端な事象であるために、なんとなく最後の結論がしっくりこなかったりしますが、過去に縛られていた人間が未来を向くことができるようになるお話、であるならば、本作はハッピーエンドであるといえましょう。
君がこの世界から肉体を消滅させてから、ずいぶん経ちました。それでも僕は、君のことを過去として整理できずにいます。
君に向けて書いた文章は、編集者の目にとまり、『世界の終わりという名の雑貨店』という題名で、出版されることになりました。僕は、出版を期に、京都から東京に居を移しました。そして、ある日、教会で彼女に出会ってしまったのです。
嶽本野ばらさん、再び。
本作は『ミシン』に収録されていた『世界の終わりという名の雑貨店』の続編にあたります。魂の双子としていた女性を失い、かなしみに暮れてる「僕」のその後を描いています。前作同様、淡々とした文章ではありますが、どこか罪悪感とでもいえるものが全編に流れているように思います。もっとも、前作を読んでいるために、冒頭の文章に引きずられた僕の感情が、全編に投影されてしまい、そのように読めたのかもしれません。
とはいえ、序盤を読んでいる段階で、全編がかつて失った女性に対する語り口調で進んでいくのかと思いましたが、そうでもありませんでした。かつて失った女性の死を受け入れ、未来に進んでいく、そのように読めば意外と健全な作品なのかもしれません。
かつて失った女性が魂の双子なら、本作で出会った女性は「僕」の存在の双子なのだと訴えます。それは同じように何かを失い、そのために感じた感情を互いに感じあい、分かり合えるからなのだとも。
彼女は「僕」を求めていました。「僕」も何者かを求めてはいたのでしょう。しかし、「僕」は彼女をどこまで受け入れるべきかを迷います。「僕」はかつて失った彼女を忘れられない。それに加えて、彼女を求めたところで、同じ結果になることが怖かった、ということもあるのでしょう。しかし、彼女の状態が悪化し、本当に「僕」なくして生きていけないような状態になってしまったとき、「僕」以外に彼女を救えない状況になってしまったとき、「僕」は決断をします。
「僕」の生き方としてはそれでいいのでしょう。彼は後悔しないことを選んびました。かつての彼は行動せずに後悔しました。だから、行動することは、彼なりの成長でありましょう。
過去があることと過去に縛られることは違います。彼が体験したことは、過去は過去である、という単純な割り切りかたができるような出来事であったとは思いません。だからこそ、この物語があり、彼女との出会いがあり、それをきっかけに彼はかつての喪失体験を乗り越えた。表面で起こっていることがあまりに極端な事象であるために、なんとなく最後の結論がしっくりこなかったりしますが、過去に縛られていた人間が未来を向くことができるようになるお話、であるならば、本作はハッピーエンドであるといえましょう。
by nino84
| 2007-10-26 20:24
| 読書メモ