本の感想などをつらつらと。


by nino84
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『闇の守り人』

『闇の守り人』(上橋菜穂子、新潮文庫)を読みました。

バルサは故郷に戻ってきた。幼い頃にともに自分を連れ出したジグロはすでに亡いが、彼女は彼の汚名を晴らしに戻るのである。
バルサはかつてジグロに連れられ逃げるように通った洞窟を再びたどり、故郷カンバルへと戻る。その途中、彼女はヒョウル<闇の守り人>と遭遇した。



先日読んだ『精霊の守り人』に続く、「守り人」シリーズの第二作目です。基本的にファンタジーは好きなので、このシリーズも刊行ごとに買うことになりそうです。文庫版で買い始めたので、どれくらいのペースで刊行されるのかが問題ではあります。


さて、本作は『精霊…』の続編ということで、前作のエピローグでバルサが故郷に戻ることを決心していましたが、その部分のお話になっています。前作の時点ですでにこの世にいなかったバルサの養父ジグロの存在が、物語のキーとなっています。一言でいうなら、バルサが過去と向き合う物語、でしょうか。
『精霊…』でチャグムを護衛し、共に生活するなかで、バルサはジグロとの生活を思い出し、それと向き合うことを決めました。バルサはチャグムを護衛することでジグロの立場にたち、物事を考える機会を得た。それが彼女を故郷カンバルへと向かわせたのでしょうが、彼女が抱えていたのはジグロへの感謝と負い目、そして…。

自らを縛る過去と向かい会うには労力がいる。そうした過去は時と共に美化、あるいは忌化され、だんだんと固着していってしまうから。時間があればあるほど、思考は固定化されていき、その事象に対する思考・感情の自由度を失わせていく。一人でそれを解きほぐすのは容易ではないでしょう。
バルサも一人ではそれと向かい合う気にもならなかった、チャグムと出会い、思考の自由度を得ることで、向かい合う気になれた。それは第一段階だ。その次の段階では、向い会うだけでなく、それを新たな方法で解釈しなくてはならない。それは過去の今まで見ようとしなかった部分、美しいものの醜い部分、醜いものの美しい部分を見ることだ。あるいはそれが自分の立ち位置を大きく変えてしまうかもしれない。だからこそ苦しいものになる。それでも、それを乗り越えたとき、今まで見えなかったものが見えてくるのでしょう。

見たくもない過去なんて誰でも持ってるものでしょうから、そういう強さはほしいような気がしました。


ところで、これまで2作読んできましたが、だんだん『ゲド戦記』みたいなノリになってきているように感じています。どこか説教臭いのだが、それが悪い意味ではない。良い意味で説教臭い。
個人的にファンタジーは一歩引いて読める。現実の世界ではないから。そこに住む人はある意味で別の生物であって、私たちとは違う。それでも、舞台がそれを描くことを容易にするように設定されるからこそ、そこで繰り広げられるものは、現実の世界で起こっていることを、現実以上に描き出す。
現実の世界を書く、ノンフィクションというジャンルは刺激が強すぎる。それは隠すことなく世界を書こうとするから、考える余地を与えないほどの力で迫ってくる。過去と同様に、現実も向き合うには力がいる。それに向き合うだけの強さが、自分には欠けているのだろう。
勇気がないなりに、想像力だけはある僕には、ファンタジーくらいで丁度良い。それは主題を暗に提示するだけで押し付けはしてこないから。
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by nino84 | 2008-01-12 14:25 | 読書メモ