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本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「西の魔女が死んだ」

「西の魔女が死んだ」(梨木香歩、『西の魔女が死んだ』新潮文庫収録)を読みました。

中学に入学してまもなく、まいは学校に行けなくなってしまった。そんなまいにママはしばらくおばあちゃんの家で生活し、リフレッシュしてはどうかと提案する。
西の魔女、おばあちゃんとまいのゆったりとした生活が始まった。



暗い本を読んだあとは女性作家の少し温かいお話でもと思い、今作を手に取りました。『土の中の子供』(中村文則)は思考のひとつとしては面白いのだけれど、いかんせん救いがない。すべて受け入れてくれるような作品も読みたいな、と。

さて、本作は不登校になってしまった少女、まいとそのおばあちゃんのお話です。不登校になったから、どうこうというよりも、おばあちゃんのまいへのメッセージのほうが前面に押し出されている(もちろん、不登校になったからまいへのメッセージが生きてくるのですが)作品です。起こっている事態に悲壮感はないので、今の社会で年老いてこそできるスローライフのなかで紡ぎだされるメッセージにただ耳を傾けるだけでいいかな、という感じでした。
不登校の対応がどうこう、とかいう話をするととっ散らかってくるうえ、おそらくそこがこの話のメインではないので、話を進めるためのカンフル剤みたいなものくらいの認識でいました。

おばあちゃんとの生活はまいにとって新しいことの連続です。それは異文化交流といっていいくらい。それでも、まいはおばあちゃんと生活していくうちにそうした新しい考えを自分で消化していきます。それは分かる、というよりも体に染み付くたぐいのものだったようですが。
なんにしろ、人は変わります。それには多少なりとも意志が必要で、それでも人間にとって必要なものほどよく足りなくなるものです。疲れちゃうしね。
だからこそ、からだが資本。そこにこそ健全な魂が宿る。

少し噛み砕きすぎたかもしれません。
しかし、こういうことに納得できるようになったら、人生休むときは休もうと思うようになるでしょうね。とはいえ、それが許されない社会ではなくなってきている面があるので、結局、無理をしてしまうのでしょう。もうすこし人間にやさしい社会になればいいのにね、と学生の身分でいってみても、あまり説得力ないですけど、でも言いたい。言いたくなった。そんな作品。
by nino84 | 2008-01-27 16:13 | 読書メモ