本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「雪よりも白く」

「雪よりも白く」(ハーラン・エリスン、伊藤典夫訳、『世界の中心で愛を叫んだけもの』ハヤカワ文庫収録)を読みました。

男は男めかけとしてさまざまな女を愛しながら、それでもただひとりの女、逃れる必要のない生涯の伴侶を夢見ていた。
彼は伯爵夫人の酔狂でエベレストに赴き、そこで巨大な生きものと出会う。



ハーラン・エリスンさんの短編も10作目となりました。
ふと、最近は作品の解釈に追われて感想というものとは程遠いものになっているのではと思ったりします。それでも、解釈しなければ感想もなにもあったものではないので、解釈は続けています。とはいえ、そうして解釈すればするほど、「よく考えつくな」という通り一遍の感想しか出てこなくなっており、感想が書けなくなっている部分があるのも事実です。
解釈は、自分の感情を抑えて客観的に観ることで行う(のが理想だと)思っているので、解釈をした後は感情をあらわす語の枯渇が著しいように思います。主客の視点の切り替えがうまくできるようになるといいのですが、なかなか難しいですね。


さて、本作は永遠の愛を求めつづける男のお話です。とはいえ、彼は男めかけ。ようするにヒモですから、男は女の機嫌をとらなければならないし、女は男を従わせることができる。職業柄、男女関係に常に上下関係が付きまとうため、彼の求めるものはみつけにくくなっているでしょう。

作品の冒頭から、彼は伯爵夫人の提案で彼女の酔狂に付き合います。そして、旅行先のエベレストで喧嘩別れをしてしまいます。今回も彼がもとめるものは手に入らなかったわけです。
しかし、そこで喧嘩別れしたあと、彼は吹雪のエベレストで巨大な生きものと出会います。

彼のであった生きものはイエティでした。その性別は雪"男"がいるのなら、当然その対になるものも…。
そこで男は永遠の愛をとうとうみつけるのです。当然、イエティは彼を男めかけとはみませんから、その部分はクリアされましょう。といいながら、圧倒的な体格差があるので、男の命とか諸々の主導権はイエティにあるような気がするのですが。そういったことも乗り越えるのが永遠の愛だということでしょうか。
また、人間同士だと言葉を弄してどうしても関係が不安定になりがちだけれど、はじめから言葉がなければそんなこともない。さらにいえば、非言語的な、より嘘のつけない部分―態度、声音など―でのコミュニケーションのみが成立する。そのために、男の求めていたものがみつけられたのかもしれません。


ただし、上記の言語/非言語コミュニケーションのくだりについては私の全くの想像ですから、これを問題にするかどうかは読者しだいだと思います。私が本作を読んで、イエティと人間をわけてるのはただここだけかな、という気がしたのでその点に注目しただけです。
とはいえ、男は職業柄言葉を弄されることが多くなっていたように思いますが、そもそも言語って非言語的なものをはっきりさせるためにも使えるわけで、ようは使いようだと思うんですよね。だから、この作品の男めかけにとってはそこの違いが一番重要だったかもしれないけれど、人それぞれで何によって愛というものを判断できるかといのは違うでしょう。態度は嘘をつくのは難しいけれど、ラベルを貼るのが非常に難しい。一方、言葉は嘘をつくのは比較的簡単だけれど、ラベルを貼るのは比較的容易い。むしろ話し手がラベルを貼ってくれてる場合もあるわけですし。


とりあえず、ここ何作かの中では比較的読みやすい、読み解きやすい作品だと思います。テーマも突飛なものではないですし、短くまとまってもいますし。
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by nino84 | 2008-02-11 12:21 | 読書メモ