本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「星ぼしへの脱出」

「星ぼしへの脱出」(ハーラン・エリスン、浅倉久志訳、『世界の中心で愛を叫んだけもの』ハヤカワ文庫収録)を読みました。

ベンノ・タラントは火事場泥棒をしていて3人の男に捕まった。彼らはタラントにある手術を施し、言った。
「本星系は今まさに異星人に侵略されようとしている。我々は母星にこのことを伝えなければならない。お前はこの星に残る最後の人間となれ。そして、異星人から逃げつづけろ。お前の体内には太陽爆弾を埋め込んだ。」



まだまだハーラン・エリスンさんです。


さて、本作はベンノ・タラントが異星人相手にリアル鬼ごっこをするお話ではありません。本作はタラントが自分を残した者たちに復讐するために生き残ろうと、異星人相手に奮闘するお話、とも少し違ってきます。

タラントは死線を潜り抜けるなかで、自身の麻薬への依存や自分のなかの弱い心と向き合い、そしてそれを超越していきます。当初こそ他者への恨みがタラントの原動力でした。しかし、さまざまなことを超越した彼にとって、もはや他者は関係ないのです。

自分はどの程度の力を持っているのか、その力で何ができるのか、それは自分を客観的に知ることであって、非常に難しいことだといえましょう。自分の力は、主観的に観ることは非常に簡単で、そのために誇大化や矮小化されやすいものなのですから。
タラントは異星人の焦りから、彼のもつ力―太陽爆弾―がどの程度の力であるかを知ります。同時に、死線を潜り抜けるなかで、自身に対する自信をつけていきます。過度の自信は、あるいはタラントに死を招いたでしょう。しかし、元来の彼の臆病さが彼にできることを客観的に観る手助けをしたのです。彼は彼を把握し、自分自身の神となりました。

そこに異星人という概念は関係ありません。自分と他者、そしてできること、できないことがあるだけです。そして、彼のできることは…。


いろいろとこね回してみましたが、一度読んでみればなんとなくつかめる作品だと思います。また、なによりこうやっていろいろと考えるよりも、タラントが、テロリストに立ち向かうヒーローよろしく、暴れまわる姿を追っていくのが面白いような気がします。
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by nino84 | 2008-02-14 22:26 | 読書メモ