本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「殺戮すべき多くの世界」

「殺戮すべき多くの世界」(ハーラン・エリスン、伊藤典夫訳、『世界の中心で愛を叫んだけもの』ハヤカワ文庫収録)を読みました。

ジャレッドの仕事は雇われの世界殺戮者。彼は宇宙の各地から送られてくる依頼をうけ、依頼人の指定した惑星を侵略していくのだ。彼は今日も自身の隠れ家で手製の人工知能との対話のもとである目的のもと依頼を取捨選択しつづける。
そんなある日、彼は人工知能から不可解な提案をうける。



ハーラン・エリスンさんの短編も残すところ本作を含めて3作となりました。半月以上掛かっていますが、今週中には終わりそうです。

さて、本作ですが、読んでいくうちになんとなく放送中のアニメ『機動戦士ガンダム00』を連想してしまいました。主人公の立場や規模は違うのですが、根底に流れる思考(アイデア?着想?)は似ているのだと思います。
本作では最終的な答えは出しませんでしたが、ガンダムどうするんでしょうね。

閑話休題、本作の話をしましょう。本作の主人公ジャレッドは自らの能力と人工知能、そして私設の軍隊を用いて世界の各地で侵略を繰り返していきます。その力は強大で、彼は惑星連合にさえ自由に手出しが出来ないほどの力を持っているのです。
そんな彼の本当の目的は、いまだかつて文明が到達したことのない境地に文明を導くことであり、それを達成するためにその力は必要なものでした。

力―権力であり軍事力であるような各種の―がなければ、世界になにも訴えることはできません。世界に物言うために、彼は力を身につけようとし、実際に力を伸ばしてきたのです。

彼はこうした計画を、これまで自身と自ら製作した人工知能のみによって推し進めてきました。彼は裏切られることを恐れたし、内部分裂という形で計画が終わるのを嫌ったからです。しかし、彼も生物です。生物的な限界はいつかやってくる。
そのための保険がどうしても必要となる、と人工知能は彼に提案しました。そしてその提案は受け入れられ、とりあえず保険をかけることに成功したのです。

ここまでが本編の展開です。彼、あるいは彼の意思を継ぐものが目的を達成できたかは分かりません。
しかし、彼自身も目的と手段の矛盾には気づいており、それによって悩んでいます。目的がなんであれ、手段が戦争行為であれば、結局のところ新なた戦争行為を生み出してきたのが文明です。しかし、力なきものの声が文明に反映されてこなかったのも事実ですから、力は持つしかない。したがって、一介の人間が目的を達成するための方法は力、それも軍事力をもつしかないのです。

また戦争が繰り返されるのか、それとも目的が達成されるのか。歴史は繰り返すのか、あらたな境地に達成するのか。それはやってみなければ分からないことなのですが…。
個人的には人間が人間であるうちは歴史は繰り返すんだろうな、と思います。機械によって管理され始めたらどうなるか分かりませんが…。

ところで、計画が終われば、それは「眠れ、安らかに」(ハーラン・エリスン)の世界と似た世界でしょう。著者本人も、反抗するものは必ず出てくると考えているようですよね。
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by nino84 | 2008-02-18 17:48 | 読書メモ