本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「少年と犬」

「少年と犬」(ハーラン・エリスン、伊藤典夫訳、『世界の中心で愛を叫んだけもの』ハヤカワ文庫収録)を読みました。

第三次世界大戦は地上を荒廃させた。秩序は乱れ、身を守るのもソロでなけりゃむずかしい。おれは犬のブラッドとソロを組んで、食いものとスケを探してる。
ある日、おれとブラッドは女を見つけ、彼女をものにしようと思ったんだ。しかし、彼女はこの地上で生活しているにしてはあまりに女だった。はたして彼女は戦火を逃れ、地下に住み着いたものの一人で…。それでもおれは彼女が忘れられず、彼女を追って地下へと…。



これでハーラン・エリスンさんの短編集『世界の中心で愛を叫んだけもの』も最後です。

さて、本作は第三次世界大戦後の荒廃した世界で生きる人々を描いた作品です。
人々は地上でなにはなくとも自由に生きるか、全てを与えられながら地下で徹底した管理のもと生きるか、そのどちらかの方法で生活している時代。そんな時代に、地上で生きる男と地下で生きる女が出会う。
男は女の洗練された女性らしさに惹かれる。そして、女性の「愛って何か知ってる?」という問いは彼を困惑させる。彼女は、「一度も人を愛したことがなければ」、愛は分からないという。男はまぜっかえすことしかできなかった。

男の住む世界はそんな余裕はないのだ。自分の命をまもり、犬の命をまもり、日々の食いものを探し、少ない娯楽を楽しみながら、生きる。それが地上の生活の全てだから。
しかし、女の住む世界では別の世界がある。女を追った男は、その世界を知る。女の住む世界には自由がないこと、太陽がないことを知る。それがどんなに自分にとって必要であるかを。そしてもう一つ、これまでともに生きてきたブラッドが、どんなに自分にとって必要であるかを知る。

こうして男は気づく。愛とはなにかに。
女は「一度も人を愛したことがなければ」、愛は分からないといった。しかし、彼は知っていたのだ、ただそれが、そうした感情だと気づかずにいただけ。

少年は犬を愛するものさ。


勢いでオチまで書いてしまいました。作品としては、彼が愛というものに気づく過程を描いたものだといえます。たとえオチがかいてあったとしても、その過程までをこのメモは書いていません。この作品はそこをこそ楽しむ作品だと思えます。
男が迷い、苦しむ姿。それは作品を読まなければ分からないものです。
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by nino84 | 2008-02-21 11:28 | 読書メモ