本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「縁側」

「縁側」(北村薫、『DS文学全集』任天堂にてダウンロード配信)を読みました。

高校教師だった誠一郎は、今年、定年を迎えた。娘はすでに結婚して、由紀子と2人での第二の人生。
誠一郎は、職を退いた旨の挨拶状の返書への返事を書きながら、ふと「さくら」という漢字のつくりが分からなくなり、由紀子にたずねる。「さくらという漢字は、―上は、《ノ》を書いて《ツ》だっけ。それとも、《ノ》はいらないんだっけ」



今回は、またすこし趣向を変えまして、紙の本ではなく、ニンテンドーDS専用ソフト『DS文学全集』のなかの一作についてメモを書こうかと思います。
『DS文学全集』は任天堂から発売されているソフトで、CERO区分では教育・データベースとなっている商品です。明治から昭和にかけての文学作品を100冊収録しており、それらを自由に選択し読むことが出来ます。ソフト単体でも楽しめるのですが、それだけでなく、wifi通信を利用したダウンロード配信もコンテンツとして用意されています。
本作は、そんなダウンロード配信を利用して、ダウンロード配信限定で公開されている短編小説です。


さて、本作は定年後の老夫婦のやりとりで話が展開していきます。
手紙を書きながら、漢字のつくりがわからなくなった誠一郎。それを教える由紀子。そんなやりとりから、誠一郎は夏目漱石の小説『門』の冒頭部分を思い出します。
縁側でくつろぐ夫とそばで針仕事をする妻。夫は近来の近の字をどう書くかたずね、妻はそれに答える。…それがどうだということもなく、晴れ渡る空を眺める2人。

誠一郎は『門』に描かれる夫婦像がとても気に入っているようです。たしかに、なにも言わず、近くにいて落ち着いていられる状態、あえて会話がなくても成立する関係、といのはいいものだと思えます。
誠一郎が退職し、生活の形態が変わっていく。そんななかでふとしたことで思い出された『門』に描かれる夫婦像。それはこれからのあたらしい生活の理想として2人に共有されたことでしょう。

なに気ないやりとりが新しい生活への不安を打ち消し、楽しみへと変えてくれる。そんな夫婦生活の一場面をうまく描いているんじゃないかと思いました。


それにしても、こうやって作品の下に敷かれるほどの作品を読んだことがないのは、なんか寂しくなってきます。夏目漱石さんの作品は教科書で『こころ』のさわりを読んで以来読んでいないので、機会があれば読んでみようかと思います。
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by nino84 | 2008-02-23 12:28 | 読書メモ