本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「虎」

「虎」(田中ランディ、『DS文学全集』任天堂にてダウンロード配信)を読みました。

夏休みの課外授業が「バーチャル・ズー」への遠足だと発表された。なんでも本物のアムール虎がやってくるらしい。
核戦争後、地下に作られた新トーキョーシティ。猛獣になることが否定される世界。でも、僕たちは本物の虎にそうした感情を駆り立てたれる。



前回に引き続き、『DS文学全集』でダウンロード限定配信されている作品です。今作は、中島敦の『山月記』をモチーフに田中ランディさんが書き下ろした短編小説となっています。

さて、本作ですが、少し前にハーラン・エリスンさんの作品で似たような作品―人間が平和に暮らすために攻撃性を規制するのだけれど、結局それは抑えきれない―を読んだ気がするので、個人的に新鮮味に欠けてしまいました。
ただし、主人公が子どもということもあって、ハーラン・エリスンさんの作品よりも簡潔に、またかなり肯定的に描かれていたと思います。

子どもだから、地下で平和に暮らすということの意味は十分に理解できない。なぜ衝動にしたがってはいけないのか、理解できない。そんななかで本物の虎がどうしよもなく「僕」と友達のなかの野生を目ざめさせる。

こういったことは子どもだから、許される部分というのはあると思うのです。
言語化できないものがこみ上げてきて、それに抗うことができない。それは子どもだから清々しいものとして描くことができます。特に地下での生活が子どもらしさを奪うものであるからこそ、「僕」たちの行動はさらに清々しいものとみえてきます。


本作ではそれで終わっていいのでしょう。子どもらしさ。その復活。
しかし、それよりも以前にハーラン・エリスンさんの作品を読んでしまっている僕には、こうした描き方はすこし軽すぎるように感じてしまいました。
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by nino84 | 2008-02-24 10:07 | 読書メモ