本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「あるソムリエの話」

「あるソムリエの話」(貫井徳郎、『DS文学全集』任天堂にてダウンロード配信)を読みました。

女房に逃げられ、家にひとりでいては気が滅入るからと外食がふえた。そのうちに顔なじみも増えてきた。
そんな顔なじみの男のひとりが、私にふと身の上話を始めた。なんでも男はかつてソムリエをしていたらしく、そのときの体験談らしい。



前回に引き続き、『DS文学全集』のダウンロード限定配信の短編です。今回は貫井徳郎さんだそうですが、やはりこの方の作品も僕は読んだことがありません。こういう新しい出会いが簡単なのが『DS文学全集』のいいところでしょうね。


さて、本作はある男の身の上話が話題の中心です。本作がモチーフにしたのは『セメント樽の中の手紙』(葉山嘉樹)です。

『セメント樽の…』はセメントの作製作業中に機会に巻き込まれその命を失った男の妻がその男の欠片の入ったセメント樽に手紙を入れており、それが木曽川の工事現場である男によって発見されるというお話です。とても短い作品ですし、青空文庫でも読めますので、読んだことがない方は呼んでみたらいいと思います。衝撃的な作品ではあります。

そんな作品をモチーフにしている今作では、顔なじみの男がレストラン地下のワイン倉で壁の中から男の声を聞いたという体験を語ります。
それは本当の体験なのか、それとも『セメント樽の…』をもとにした作り話なのか…。

短い作品ですので、筋としては本当にそれだけの作品です。結局、嘘か真かの結論は読者が判断するしかありません。

たとえば、嘘だったとすれば、男は主人公と同様にただ人と話して気を紛らわせたかっただけなのかもしれないなど、嘘をついた理由。本当であった場合に彼がもとネタがあると疑われたときの心情。こうしたことはいくらでも想像できます。
情報量が少ないので、読者みずからがいくらでも想像できると言う意味では面白い作品だと思います。
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by nino84 | 2008-02-28 16:16 | 読書メモ