本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「試着室」

「試着室」(金原ひとみ、『yom yom vol.6』新潮社収録)を読みました。

ショッピングはいい。ショッピングをしている間、私は色んな事を忘れられている。
初めて彼とショッピングに行った時、彼の無機質な、張り付いたような微笑みが印象的だった。この違和感は年齢差からくるものだろうか。たった六つの差。それだけの事のはずだ。



引き続き『yom yom』の収録作品からメモを書いていこうと思います。ただし、意外と厚い雑誌なので、とりあえずめぼしい作品を読んで、メモを書いていくつもりです。
今回は金原ひとみさんの短編作品です。金原さんの作品は芥川賞受賞作である『蛇にピアス』以来となります。『蛇にピアス』は多分、高校生時分に読んだのだと思うのですが、ピアッシングとか、スプリットタンとか、なにやら行為の衝撃だけが印象に残っていて、なにか肝心な部分がすっぽり頭から抜け落ちてしまっています。なにか不安定な作品だな、という漠然とした印象はかすかにあるのですが…。

さて、返って本作ですが、主人公が27歳の女性ということで、思春期的な不安定さは感じられません。しかし、本作の主人公は、それなりに歳を重ねたからこその、そして年下と交際しているからこそ感じる、自分の擦れてしまった感覚に違和感を感じています。

若い頃に自分が年上の彼に感じていたこと、それを私は年下の彼に感じさせているのではないか。彼は自分に温度差を感じている。彼女は歳を重ね、自らを客体化できるようになったからこそ、その現状に戸惑います。


金原さんは芥川賞を獲ったときの印象が強すぎて、彼女の年齢はあのころの若いままで止まっているのですが、あの頃二十歳くらいで話題になっていたと思うので、現在はそこそこの年齢なんですよね。なんにしても、こんな話を書くようになったのか、というのを感じました。
久しぶりに読んだら、僕のもっていた著者の印象と作品の印象がずいぶん違いました。自分が歳を重ねてしまったという認識をもちはじめた女性の機微をうまく描いているな、と。強い(強くみえる?)大人の女性を書くようになったんだ、と。そんなことを思いました。
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by nino84 | 2008-03-02 23:59 | 読書メモ