本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「バット男」

「バット男」(舞城王太郎、『熊の場所』講談社文庫収録)を読みました。

去年の秋口から調布に出没するようになったバットマンは、臭くて汚くて髪の毛ぼうぼうのうえに、少し気に入らないことがあるとバットを振り回す情緒不安定な男で、あのゴッサムシティのヒーローとは程遠かった。
バット男が人にはバットを振らないことを知っているから、彼は頻繁に殴られ、そして蹴られた。そのうちに、バット男が殺されたという話が聞こえてきた。しかし、彼の影は消えることなく、僕の周りには彼の存在の影響が依然残っていた。



前回書いていませんでしたが、今読んでいる舞城王太郎さんの作品は『熊の場所』という短編集です。前回の表題作「熊の場所」、今回の「バット男」、そして書き下ろしの短編の3作収録されています。

さて、今作はタイトルだけをみるとなにかコミカルな感じをあたえますが、そんなことはなく、意外としっかり青春している作品です。毎度おもうのですが、舞城さんは、成人を主人公で書くよりもこの思春期くらいの人物を主人公にした作品が良いと感じます。文体がかなり一貫しているので、成人を描くにはすこしエネルギー過多であり、鬱陶しく思えるのです。
ちなみに、今作の主人公は高校生の男の子ですから、あぁ、と思えます。

主人公”僕”はバット男の存在をこの社会のストレス解消システムの一部であり、仕方のないものと捉える一方で、それに違和感を持っていました。そして、バット男が死んだ後には、誰かがそのシステムのバット男の位置に納まるのだと、考えたのです。
バット男の位置に納まる者、それ自分でない保障はない。彼はそれに抗おうとしながらも、一方で社会の枠の外に出て行くことを恐れます。

社会の枠の中にはいたいけれど、そのポジションにはおさまりたくない。でも、自分でポジションなど選べるのだろうか?枠の中にいるためには社会に流されなければいけなくて、流されればいつの間にかあるポジションにおさまっているだろうに。
そうやって思い悩む”僕”の一方で、大賀という友達は、誰の子どもかわからない赤ちゃんを宿した愛する人を守るために、高校を中退しバイトをして生活をし始めます。
このご時世に高卒前に働き出す男。社会の枠から飛び出していった男がいる。”僕”はそんな彼のことを気にかけつづけます。それは心配というよりも、社会の枠を飛び出しながら社会で生活していけるのかという興味からでした。


僕は社会の枠からあまり飛び出そうとは思わないけれど、このままだと飛び出しかねない位置にいるので…なんか…意外と枠から飛び出るタイミングっていろいろなところに転がっているものだと思ってしまいます。
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by nino84 | 2008-03-07 13:46 | 読書メモ