本の感想などをつらつらと。


by nino84
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『ブレイブ・ストーリー』

『ブレイブ・ストーリー』(宮部みゆき、角川文庫)を読みました。

三谷亘は少し理屈っぽいところはあるけれど、テレビゲームの好きなごく普通の小学5年生だ。そんな亘にある日、突然に両親の離婚話がもちあがる。
家を出て行く父をとめられず、ついには母がガス自殺を図るに至った。亘は家族の幸せを取り戻そうと、友人の美鶴にいざなわれ幻界(ヴィジョン)へと旅立つ。



映画を観たら原作も読みたくなってしまったので、読んでみることにしました。久しぶりのまっとうな読書だった気がします。

さて、映画の原作本ですが、角川文庫では上、中、下と3冊立てになっています。映画一本にまとめたとは思えない分量ですが、読んでみるとやはりエピソードがかなり削られているのが分かります。

前回の映画の感想にも書きましたが、やはり両親の離婚のエピソードは宮部さんらしく(?)かなり詳しく語られています。上巻はその大半を現世での描写に費やしていますが、そこでは小学5年生の男の子が両親の離婚話に困惑する様が丁寧に描かれています。映画ではさらっと父が家を出て行きましたが、本作では幸せな過程生活を描気ながらしっかりと離婚への伏線を張っていき、父が出て行ってからも、かなりの時間をかけて亘の所在なさを描いていきます。
最終的に母がガス自殺を図るに至ってヴィジョンへ行くことになるのですが、こうした説得力のある―子供だましでない―ところをベースにしてファンタジーの世界へと話が展開していくのです。
ちなみに、美鶴についてもその生い立ちは映画と異なりヴィジョンへ行く前に明かされ、さらに彼をとりまく現在の状況も描かれています。

また、ヴィジョンへ移動してからもやはり多くのエピソードが展開していきます。一つ一つが亘の成長を促していくものではあるのですが、こちらのエピソードは異世界ファンタジーとしての世界観がしっかりしているため、現世の話とはまた違った魅力のあるものとなっていると思います。
映画ではヴィジョンの世界がかなり単純化されて描かれていましたが、本作では民族(種族?)差別、組織間対立、宗教といったものを描いたエピソードも見受けられます。
結果、映画よりもかなり重い印象を与える作品かな、とも思えるのですが、そこは宮部さんですから、軽いタッチで入り込みやすく欠いていると思いました。


ところで、本作は著者がテレビゲームが好きなのが伝わってくる作品でもありました。『ロマンシングストーン・サーガ』という架空のゲームを思い浮かべながら、亘が「ゲームだったら…」といった思考をすることが多いわけです。架空のゲームの元ネタは明らかに某RPGなのでしょう。それはそれですが、「ゲームだったら…」というのは一般の読者層に通じるのだろうかと少し疑問に思ったりしました。
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by nino84 | 2008-07-10 03:43 | 読書メモ