本の感想などをつらつらと。


by nino84
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『パコと魔法の絵本』

『パコと魔法の絵本』を観ました。

とある病院に、頑固で偏屈なお爺さんがいました。その人は、なにかといえば、人やものにあたりちらし、他の入院患者さんから嫌われていました。
そんなお爺さんが、ある日、病院の中庭で、パコという少女と出会います。彼女はお爺さんに屈託なく笑いかけ、もっていた本を読んでくれたことをとても喜んでいました。
翌日、お爺さんは再びパコと出会います。しかし、パコはお爺さんのことを覚えていませんでした。彼女の記憶は一日しか持たないのです。
しかし、お爺さんが彼女のほっぺに触れたとき、パコはお爺さんに「昨日もさわったよね?」と尋ねたのでした。
彼女の屈託のない笑顔が、お爺さんのを変えていき、そして…



久しぶりの更新になりました。『お伽草紙』(太宰治)の収録作品の感想を全部はかけていないのですが、かれこれ半月が過ぎ、すでに忘れてしまっている部分も多いため、断念しました。また、再読などしたら、書くことにします。

さて、今回は映画です。邦画をみるとなぜか役所広司の出演作であることが多いのは気のせいでしょうか。存在感があるので、そんな印象を受けるのかもしれません。お爺さんすごかったです。
本作での役所さんの役所は、パコとの交流で変わっていく、お爺さんです。若い頃に会社を興し、それを一代で一流企業に仕立て上げ、しかし、会議中に発作で倒れてしまい入院生活を送っています。
彼は、その経営者としての理論から、弱い人間を認められず、しかし、入院している自分が弱いのではないかと思い、結果として自分も認められなくなってしまっていました。仕事ができず、ベッドで寝ているしかない自分の存在意義を感じられないのでした。
彼は、それを怒りとして表出しました。「強い」人間というのを、患者や看護士への暴力、怒りというかたちでしか、表せなくなっていたのです。

彼がパコとであったときも、やはりそのようにしました。彼はパコに意地悪をしましたがパコはそれでも笑っていました。あるときお爺さんがパコを殴っても、翌日パコは笑顔でお爺さんに近づいてきたのです。そこでお爺さんはパコの症状について知らされます。そして、彼は今まで弱いものにしてきた仕打ちを悔います。パコになにかしてやりたいと思うようになったのです。

しかし、彼はその方法を知りません。いままで弱者は切り捨ててきた男です。そんな彼が、彼女にしてあげることを考えることは容易なことではありませんでした。彼は泣きました。泣くことは弱いことだと思っていた彼が泣きました。

一つの出会いで、一つの出来事で、人は変わります。お爺さんはパコとの出会いで決定的に変わりました。自分の弱さを認めることができるようになりました。自分の弱さを認められる人は、人にも優しくなれると思えます。自分の弱い部分を支えてくれるものがあることを知っているからです。今、彼の生活はパコに支えられていました。だから、彼はパコを支えてあげたいと思うようになったのでしょう。筋だけいえば、そんなお話。


ここまで書いてきて、「魔法の絵本」が一度も出てきていないことに気づきました。ここからはそちらの話をしましょう。
お爺さんは、パコが毎日読んでいる本『ガマ王子対ザリガニまじん』の劇をサマークリスマスの出し物としてやることで、パコを喜ばせようと考えます。その物語は、意地悪ばかりしていたガマ王子が仲間の大切さに気がつき、仲間を傷つけるザリガニまじんという悪者と戦うというものでした。

劇をやるには役者がいります。しかし、お爺さんはいままでさんざん他の患者や看護士に意地悪をしてきたのです。彼らは最初、それをすることを拒みました。そんな彼らを動かしたのは、お爺さんのパコへのおもいであり、彼らのパコへの思いでした。

今まで病院にあった不穏な空気はなりを潜めていき、病院中に連帯感が生まれます。一人が変われば、関係が変わっていく。それによって、みんなが変わっていく。人は変わっていくのです。
ただ、パコだけが、変わらずにいました。彼女がすべての始まりで、しかし、彼女は決して変わりません。生きている限り、ずっと自分の7歳の誕生日を生き続けるのです。お母さんの誕生日プレゼントである絵本を毎日繰り返し、読むのです。

それは哀しいことです。だからこそ、お爺さんは違うかたちでパコに物語を体験させてやりたかったのかもしれません。それを覚えていようが、いまいが。


ところで、パコの症状ですが、7歳に直面化は難しいとかんがえたんですかね。直面化すれば、対応策はいくらでもあると思うのですが。もちろん、それをやると自分の症状だけでなく、両親の死にも直面しなければならないし、大変なことはいっぱいあるのですからそれはそれなのかもしれないですね。加えて、別の要因も絡んでいたようですし。

こういうツッコミどころを探すことになるから、間をおいて感想を書くべきではないとたまに思います。登場人物がすべて濃くて、話のテンションの上下も激しいこういう作品は、とりあえず、揺さぶられておくのが正解かな、と思うのです。そうしないと、いろんなものが削がれてしまう。ごく単純な物語だからこそ、そうした向かってくるものを浴びるように体験すればいいのだと思うのです。
もちろん、登場人物がそれぞれ抱えている問題は重いのですが、だからといって、それに立ち止まる時間はくれない。立ち止まる時間はくれないから、とりあえず、一緒に苦しんで、次の場面に飛んでいく。全体としては、そんな感じで楽しんだ。

だから、本当なら、こうやってだらだらとなにかを書いていなくてもいい作品だと思います。ただ、泣いて、笑ってしていれば、いいのかな、と。パコがかわいかったら、それでいいのだし、ザリガニまじんがキモかわいかったらそれでいいのでしょう。
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by nino84 | 2008-10-04 00:28 | 視聴メモ