本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「バスジャック」

「バスジャック」(三崎亜記、『バスジャック』集英社文庫収録)を読みました。

今、「バスジャック」がブームである。能楽に例えて形式美化されたそれには、それぞれ役割が振られ、国民の興味の的となっている。
かくいう私が乗るバスでも、今まさにバスジャックの最中である。10:30に四人の乗客が一斉に立ち上がり、「シテ」役の男が口上を唱えだしたのである。


久しぶりの更新になりました。更新する時間をつくらず、うだうだと来てしまい、内容を忘れつつあったので、このあたりで表題作だけでもまとめておこうと思う次第です。

さて、本作はタイトルどおり、『バスジャック』の表題作です。バスジャックを様式美として捉えるというちょっと変わった世界のお話です。バスジャックの役割を完全に分業化し、それぞれがやるべきことをきちんとこなし、なおかつ全体としてバスジャック本来の異空間性を保つ。一定のルールがあり、そのなかでやるからこその美しさが生まれる…はず、なのだろう。
しかし、実際には形式化されることで、その本来バスジャックがもつ性質は徐々に失われていく。そこに生命の危機感はなくなるし、枠からはみ出すことができずに、堅苦しいものとなる。やる方も、巻き込まれる側も、慣れすぎてしまっており、すでに形式だけの劇であって、そこに美を見出すことが難しくなっていく。そこで登場するのが、原点に帰ろう、という安直な輩である。

そもそもバスジャックの様式美ってなんだ、という話になるのですが、それは作中を参照してください。ただ、なにが書きたかったのか、イマイチはっきりしないな、という気がしてしまう作品でした。発想一発勝負で、「面白かったでしょ」、でいいならそれでいいのです。ただ個人的にはなんか、しっくりこない作品でした。
しっくりこないのはなぜかを考えたのですが、バスジャックを様式美にはめるという意外性で勝負しながらも、結局オチが、原点に帰ろうであった部分に違和感を感じたのでしょう。それは、ルールに縛られないものをルールで縛ったら面白くない、という当然の結果だと思えてしまうのです。
様式美を持ち出したら、むしろそれを成立させて欲しかった気がします。ルールを守らないのは、モダンアートのある意味では定番の手法であって、個人的には様式美こそないがしろにされている気がするので、様式美の美しさを訴える作品であって欲しかったように思えました。
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by nino84 | 2008-12-17 00:05 | 読書メモ