本の感想などをつらつらと。


by nino84
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

<   2006年 04月 ( 5 )   > この月の画像一覧

『銀河帝国の弘法も筆の誤り』(田中啓文、ハヤカワ文庫)を読みました。

「脳光速 サイモン・ライト二世号、最後の航海」、「銀河帝国の弘法も筆の誤り」、「火星のナンシー・ゴードン」、「嘔吐した宇宙飛行士」、「銀河を駆ける呪詛 あるいは味噌汁とカレーライスについて」(収録順)の5作が収録されたSF短編集です。


SFなんですが、バカです。ごめんなさい、これ以上何も言えません。もちろん一読してSFと定義できる作品群ではあるのです。とてもシリアスに作れそうな骨組みなのです。それでもバカなのです。
SFのオチがダジャレとはこれ如何に。
もちろん、SFでギャグをやっていけないとはいえない。しかし、ひとつのダジャレのためだけに大まじめに話が展開してきたり、そもそも冒頭からダジャレだらけという作品はSFというジャンルに限らず、そうないと思えます。ここまで書かれると、さすがに違和感があります。
この作品群を受け入れられるかどうかは本当に個人的なものだと思います。万人受けはしそうにもありません。僕は受け入れられそうにありません。呆気にとられてしまって、上手く評価しかねます。

たぶん、SFの素養があって、SFの典型はこうだ、という知識が頭の中にあれば、それがどのように崩されたのかを見る価値はあるように思います。これがSFの入門書になるとは到底思えません。
[PR]
by nino84 | 2006-04-21 23:29 | 読書メモ
『無限のリヴァイアス1』(黒田洋介、電撃文庫)を読みました。

西暦2225年。人類が太陽系全域に生活する時代。ゲドゥルト・フェノメーンによって太陽系の半分がゲドゥルトに沈んでいる時代。
地球の衛星軌道上に存在するリーベ・デルタは太陽フレアの異常放射空間であるゲドゥルト内へと落ちていた。このまま落下すればゲドゥルトによってリーベ・デルタは圧壊してしまう。圧壊を食い止めようとした大人たちは死に、子どもたちだけが取り残された。
リーベ・デルタがその限界を超え、圧壊しようとするまさにその時、少女は目覚める。少年たちの様々な感情の発露を感じて。


テレビアニメ『無限のリヴァイアス』のノベライズ本です。『蠅の王』を読んだら急に読みたくなりました。一応一巻という形になっていますが、続編は出ていません。察してください。

テレビで描けなかったこと、というよりは描けないことが表現されています。主要キャラクターの内面を描くということに重きがおかれており、アニメでは出てこない設定が多くあらわれてきます。そうした部分が魅力なのでしょうが、そうした部分がこの作品の続編を困難にしたように思います。アニメの視聴層を考えたら少しやりすぎたのではないかという部分があります。
ただ富野由悠季の『機動戦士ガンダム』ような前例もあって、小説という媒体でしかできないことをしようという意図、というか心意気は分かります。

なんにしても本書を読むのならアニメを観てください。本書は完結しませんので、かなりの消化不良に陥ります。アニメだけでも十分に感情面に重きをおいた作品なので十分に楽しめると思います。


余談ですが、本書の文中に「萌え」という単語を見つけました。2000年発行なので、そんなに広まっていないはずの、むしろできて間もない言葉であろうに、と思い衝撃を受けました。時代がやっと追いつきましたよ(?)。
[PR]
by nino84 | 2006-04-08 21:25 | 読書メモ

『蠅の王』

『蠅の王』(ゴールディング、平井正穂訳、新潮文庫)を読みました。

時は未来。戦争のために、イギリスから疎開する少年たちの乗った飛行機が孤島に墜ちた。大人は一人もおらず、少年たちだけでリーダーを決め、救助がくるまでの共同生活が始まった。当初は上手くいっていた共同生活だったが、蛇のような獣の存在を端緒として、次第に秩序は失われていく…


約半年で2度目です。諸事情あって、読み直しました。この半年で、何を知ったと言って、テレビアニメ『無限のリヴァイアス』のネタもとだと知りました。いわれてみれば、確かにその通りです。だからどうだというのではないですが、こういう作品が結局好きなのだ、と再確認したわけです。『無限のリヴァイアス』も好きなんですよ。


人間の心に巣くう暗いもの。理性に生きるのではない、人間の本能の部分。社会で、規範の中で生きている僕らにはそれを抑える術がある。
では、規範がなくなったら?外的に抑圧するものがなくなったとき、その時こそ人の暗い部分が最もあらわれやすくなるときであろう。さらに言えば、規範を失いやすいのは、より幼い人たちであるといえる。彼らには規範が、あるいは規範の意味が分からない。親から叱られることがなければ、それを意識する機会などはないに等しい。
従って、人の暗い部分を描くのには、漂流モノの物語が適していると言える。(本書の中では『珊瑚島』と比べられていたが)『十五少年漂流記』のように、少年がどのように危機から脱出するかを描くのではない。本書は規範のない危機そのものを描く。
この作品ではその危機は乗り越えられていない。もちろん理性の重要性を訴える少年もいる。しかし、その少年らは人の暗い部分によって追いつめられていく。そんな状況の中で、外界から救助が来ることで、物語は一応の終焉を迎える。理性は人の暗い部分を説得できないのだろうか。

さらに、人の内面の暗い部分の指摘のみに留まらないのがこの作品で、少年たちが漂流した原因が戦争という人の暗い部分の固まりであることにも、ある種の示唆が含まれていると見ることもできよう。ラストシーンで大人を前に泣きちらすボロボロになった少年と端正な巡洋艦とのコントラストは、暗い部分の力を誇示しているようでもある。


付録としてついている(?)解説があまりにも的確だと感じました。自分に肯定的に言えば共感といえなくもないですが、意見がそれに流されているのかもしれません。
[PR]
by nino84 | 2006-04-08 00:53 | 読書メモ

『天使と悪魔』

『天使と悪魔』(ダン・ブラウン、越前敏弥訳、角川書店)を読みました。

ある朝、図像学者のラングドンはFAXを受け取る。「イルミナティ」の焼き印を押された死体の写真の、である。その死体は反物質を作り出した人物であるという。送り主は、彼が作り出した反物質が盗まれ、バチカンに持ち込まれたという。さらに、保管ケースは24時間しか保たず、それを越えると核の数十倍の威力を発揮し、周辺を消し去るという…


導入を書いてみて思いましたが、なんで宗教的な話になるのかサッパリ分からない展開ですね。これは「イルミナティ」が分かると理解が追いつくと思います。
さて、『ダ・ヴィンチ・コード』の主人公ラングドンを主人公とする作品の第一作です。本書の後に『ダ・ヴィンチ…』が続くことになります。
『デセプション・ポイント』が自然科学が、『ダ・ヴィンチ…』が芸術作品がメインに据えられていましたが、この作品はその折衷といったところでしょう。ただローマ(バチカン)が舞台であるため宗教色が『ダ・ヴィンチ…』と同様に濃いのは賛否あるのでしょう。
個人的にはキリスト教、今作では特にカトリックですが、がどのように神を定義しようと関係ありませんし、そういう考え方もあるのだろうというだけです。

それにしても展開が相変わらず早くて一気に読めるのが良いですね。展開がどの作品も同じなのは仕方がないとも思えてきます。作風として括ってしまえばその程度のものであろうと思えるのです。
ちなみに、黒幕に関しては『ダ・ヴィンチ…』よりも上手くミスリードできていると思います。
[PR]
by nino84 | 2006-04-04 00:02 | 読書メモ
『O・ヘンリ短編集(三)』(O・ヘンリ、大久保康雄訳、新潮文庫)を読みました。

収録作品は「最後の一葉」、「愛の使者」、「一ドルの価値」、「天窓のある部屋」、「ブラックジャックの売渡し人」、「煉瓦粉長屋」、「伯爵と婚礼の客」、「にせ医師物語」、「人生の回転木馬」、「釣りそこねた恋人」、「心と手」、「黄金の光」、「都会の敗北」、「荒野の王子さま」、「都市通信」(収録順)の15作品です。
なかでも「最後の一葉」、「人生の回転木馬」、「心と手」がよかったです。

「最後の一葉」
「あの木についている葉が全て落ちたら私は死んでしまう」、というお話の元ネタです。実は第3者が絡んできて予想を超える最後を迎えます。
ちなみに、病気の人は死にません。人が死んだら悲しい、O・ヘンリはそういう作風ではありません。

「人生の回転木馬」
夫婦が離婚の手続きをしに手続きのための5ドルを手に、保安官の元を訪れる。しかし、妻への補償金のために5ドルが必要であると言われてしまう。手元にお金のない夫は一旦家へと帰るのだが…
ポイントは5ドルの行く先です。

「心と手」
珍しく先が読めてしまった作品。ただこの作品をインスパイアすることはいくらでも可能、そんな作品。利き手が違うとか…。
オチが分かっても、面白いものは面白いんですよね。結局。


長編ばかり読んでいたので、ひさしぶりの短編です。『6ステイン』(福井晴敏)は短編として読めなかったので、意識の中ではすでに中編以上のものになっています。それにしてもやはりO・ヘンリはきちんとオチがあって良いですね。裏をかかれるというのもそうですし、予想していたものの上を行っていたり。ここまで短い作品の中で、しっかりと伏線を張っているのもいいですね。2度読むと、それがよく分かります。
[PR]
by nino84 | 2006-04-01 19:19 | 読書メモ