本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「空家の怪事件」

「空家の怪事件」(アーサー・コナン・ドイル、大久保康雄訳、『シャーロック・ホームズの復活』ハヤカワ・ミステリ文庫収録)

ロナルド・アデア卿が殺された。聞く所によると、殺された場所は当時密室だったらしい。私、ワトソンは独自に調査をしていたのだが、ホームズという人物の偉大さを思い知るだけだ…


ホームズを現場復帰させるための作品ですね。「最後の事件」で死亡したホームズを無理矢理に復活させたようにしか見えなかったのですが、どうなのでしょう。
アデア卿の殺害が結局おまけのようになっていました。

ちなみに、トリックも納得いかないのですが、あれですか、「たとえあり得そうにない可能性であっても、全くあり得ないものを消していって残ったものが真実だ」ということなのでしょうか。
しかし、世の中にない発明品を創造されるとさすがになんともなりませんよ…。いや、僕の知識がないだけのはなしなのでしょうか。
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by nino84 | 2006-10-30 21:58 | 読書メモ

「ワイド仇討」

「ワイド仇討」(筒井康隆、『日本以外全部沈没 パニック短篇集』角川書店収録)を読みました。

時は幕末。おれは旦那様の仇討のための旅をしている。そこに、一人の猿回しが、仇討ちに協力するから自分の仇も探してほしい、といって一行に加わった。
その後、その話を聞きつけて我も我もと同志が集まり、一行は次第に大きく、そして有名になっていく。



仇討というのは結局、メンツの問題であって、それをしなければいけないという雰囲気が幕末では残っていた。だから、仕方なく仇討をしようということになる。ただし、仇討するには仇を探さなければならず、そのためには旅をする必要がある。旅には金がいる。みんな自分の意志で仇討の旅に出たのではない人だから、収入が安定すれば、それで仇討なぞしなくてもいいのではないかという気になる。特に、時代が明治に変わってその傾向は加速していく。
それでも、やはり「仇討をする」ために旅をしているということで有名になっているのだから、有名になったぶん仇は見つかりやすい。見つかってしまえば、結局場に流されて仇討をすることになっていく。

おいつめられると、人って何するか分かりませんね。そうですね。これは仇討なんかさせちゃいけませんね。という作品。さすがパニック短篇集。
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by nino84 | 2006-10-29 11:04 | 読書メモ

『NHKにようこそ!』

『NHKにようこそ!』(滝本竜彦、角川文庫)を読みました。

俺、佐藤達広はいま流行りのひきこもりだ。だが、この状態は俺のせいじゃない。この状態をつくりだしたのは、全てNHKの陰謀なのだ。そこで俺はNHKと戦うことを決心した。…だが、その決意から数ヶ月、状況は変化しなかった。そんなとき偶然であった女の子から妙な置き手紙をもらう。
曰く、「あなたは私の『プロジェクト』に大抜擢されました」



作者のいうところの、いま流行りのひきこもり、を主人公にした作品です。作者自身にもひきこもりの経験があるらしく、それなりに自分の心性を反映しているとかいないとか。つらいね。特に作品が一人称で書かれているから、よけいに。

それにしても、主人公の症状が酷い。妄想弛緩に視線恐怖、不安神経症、神経症水準としていいのか分からないが、かなり追いつめられている。ひきこもりであるが故に、なにかを人に話すこともできず、自分の中にため込んでいくしかない。
社会との摺り合わせが上手くできないからか、―『他人を見下す若者たち』(速水俊彦)ではないが、―躁の時に「おれはよく分からないけれど、なんかでかいことをやるぜ!」という状態に陥れば、ふと気づいたときに余計に自分の無力さを知って引きこもってしまう。悪循環。しかも、ただ一人の友人は、なかば社会からドロップアウトしたような、エロゲーオタク。彼も同じような心性だから、二人いても「なんとかしなければ」、「なんともできない」ということの繰り返しになり、抜け出せない。

そんなときにあらわれたのが、プロジェクトを提案してきた女の子、岬。
彼女の登場で、主人公の周りの環境が少しずつ変わり始める。まったく新しい考え方に触れることになって、自分の考え方が少しずつ変わっていく。岬がやっていたのは、カウンセリングのまねごとだったけれど、あれでも効果はあったんだと思う。少なくとも、佐藤の思考は外に開けてきたのだから。

で、これだけだとあまりにも静かな作品のような気がしてしまうが、それはやはり小説。クライマックスに向けて、それなりのイベントが用意されている。そもそも岬という娘がなぜプロジェクトを計画したのか、そのあたりが焦点になってる。
「みんな痛みを抱えて生きているんだよ。ひきこもりさんもつらいだろうけど、つらいのはみんないっしょなんだよ」みたいな?こんなこと出だしでいったらすぐに拒絶されてしまいそうですが、社会に開けてきたひきこもりにはそれが真実なんだと、なんとなく分かる。だから、最後、佐藤は動く。懸命に。

…でも、解決するかどうかは別問題。
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by nino84 | 2006-10-28 11:48 | 読書メモ

「黄金の家」

「黄金の家」(筒井康隆、『日本以外全部沈没 パニック短篇集』角川文庫収録)を読みました。

俺の家の塀を近所のペンキ屋が黄金色に塗りに来た。意味不明だが、お金も払ってあるという。その直後、家の庭に突然プラットホームがあらわれた。なんでも廃棄物を捨てにきたらしい。


作品としては、わずか5頁の掌編。この作品から、無理に教育的意味を見いだして良いんだか、どうだか…強いていえば人の欲望や執念というのは強いんだということだろうか。
それよりも最後まで読んだときに物語の最初の意味不明な出来事の説明がついて納得できる、そういう読後感の良さといえるようなものを推したい。笑えるか、あきれるか、多分どちらかだろう。

そういえば、多少プロットは異なるものの、ドラえもんにも同じ着想で話があったような気がする。どっちが読みやすいかは人によるのだろう。
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by nino84 | 2006-10-27 23:43 | 読書メモ

「アフリカの爆弾」

「アフリカの爆弾」(筒井康隆、『日本以外全部沈没 パニック短篇集』角川文庫収録)を読みました。

ここはアフリカの土人の村。観光で収入を得ているため、表向きは非近代的な生活をしているが実際はそんなことはない。
今日は、隣の村がミサイルを買ったというので、この村も買おうと、国連軍の基地を訪ねた…。



アフリカを植民地化して、西洋の文化を流入させたのだから、当然現地の人々の生活も近代化されていく。生活が近代化するということは、なにかとお金が必要になる。そうなれば、なんとかして外貨を稼がなくてはいけない。それには、近代化された考え方が必要になってくる。
どのように儲けるか。やるとなれば、プランテーションで使われるしかないのか…?そこで観光用に見せ物の生活をしようとかんがえる。近代化されてしまった生活には、儀式など不要なのだが、それが外貨獲得のためになるから、やる。
そうして獲得した外貨は、村の近代化のために使われる。個々でいう近代化とは、生活水準を上げていくことなのだろうが、周りの村々がすべて近代化していけば当然、防衛する必要が出てくる。それがミサイルという形であらわれる。互いに持つことで抑止力になる。
なんか、悲しい。

しかも、外貨獲得の手段は観光しかないのだから、ミサイルを持つ一方で、それを伝統的な生活の中で何らかの意味づけをしなければいけない。攻撃のためのミサイルは、伝統的な生活の中に入らないからだ。しかし、伝統的な生活の儀式の中でそれを位置づけようとすれば、結局儀式自体の様式がずれていく。
それでも、観光客はやってくるのだし、なんともいえない。観光客は本質が見えていないし、また原住民さえも本質を失いつつある。それが今の世界か。
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by nino84 | 2006-10-26 21:50 | 読書メモ

「人間の大不調和」

「人間の大不調和」(筒井康隆、『日本以外全部沈没 パニック短篇集』角川文庫収録)を読みました。

おれは大阪万博に朝イチで訪れた。その片隅で「ソンミ村館」というのを見つけたのだが、まさかソンミ村が出展しているはずはないし、あまつさえ銃声やうめき声が聞こえてくる…


万博といえば、昨年、愛・地球博が開催されましたが、この作品は大阪万博を舞台にした作品です。
万博は各国のPRの場という意味が強いから、各国はそれぞれの良い部分、美しい部分を強調する。すると、各国の問題はないものとして扱われてしまうことになる。でも実際には隠された問題はそのまま残っているわけで、万博を一歩離れたら、またその問題に取り組まなければいけない。

当時、最大の国際問題といえばベトナム戦争だったのだろう。万博で浮かれているけれど、そのうらではこんなことが起こっているのを忘れてはいないか、という作品。もちろん、国際問題はベトナム戦争という書かれたときに現代の問題であったものだけでなく、過去に積み残した問題だってある。それを浮かれて忘れてしまうのは、問題なのではないかと、そういう作品。

もちろん、過去の問題に関してはいろいろ難しいこと―本当にそうした事件があったのか否か―もあって、簡単に解決できる問題ではないのだが、少なくとも忘れていい問題ではない。
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by nino84 | 2006-10-25 22:30 | 読書メモ

「農協月へ行く」

「農協月へ行く」(筒井康隆、『日本以外全部沈没 パニック短篇集』角川文庫収録)を読みました。

農家である金造一家は、世界一周旅行をした近所の農家に対抗して、月への旅行を決める。
一方、月への観光用宇宙船の船長である浜口は、月への観光旅行客のあまりの危機感のなさに苛立っていた。そんな折りに金造一家がやってきて…



どこぞのIT社長が宇宙への観光旅行うんぬんといっていたようですが、どうなったんでしょうね。

さて、この作品はお金を積めば誰でも宇宙旅行ができる時代のお話です。
消費者というのは、与えられたものは、なんでも安全なんだと思っている部分があって、だからなにをしても大丈夫だと思ってしまうことが多い。電子レンジで猫を乾かそうとしてみたり、だってしてしまうのだから消費者というのは予想以上に無知なのである。
宇宙旅行が商品として成り立つということは、安全が確保されているからやっているのだというのがある。実際には、諸注意があってそれなりの枠の中でしか楽しめないのだが、それは提供側の都合だから、サービスを受ける側にはサービスをするのが当たり前だから、という考え方からそれを忘れがちになる。
結局、「無知の知」を目指せ、ということだったりするのだが、分からないことを分かるというのは、実感がないぶん、難しいことを分からないと思うよりも、難しいのだろう。

無知だから、何が怖いか分からず、恐れがない。ある意味で幸せなのだろうが、何かが起きてからでは遅いのだから、結局それは罪なのだ。古い言い方だが、知らないで済ますことができるのなら、警察などいらない。
確かに、上手くいけばそれはそれで良いのかもしれないが…これはこの作品を終わりまで読んで考えて下さい。
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by nino84 | 2006-10-24 22:02 | 読書メモ

「新宿祭」

「新宿祭」(筒井康隆、『日本以外全部沈没 パニック短篇集』角川文庫収録)を読みました。

LSD、無法者組成企画社。おれはそこの社員だ。政府やらなにやらからゲバルトの注文を受け、それを時間通りに派遣するのを仕事にしている。明日は新宿祭。今日はその準備でもって一年でもっとも忙しい時だ…


ゲバルト【(独)Gewalt】 
《力・暴力の意》主に学生運動で、暴力的手段を持ってする闘争。ゲバ。

なるほど。そういうものなのか。完全に死語ですね。ちなみにyahooの辞書検索の結果です。結局、検索を掛けなければ言葉の意味する所が正確に飲み込めませんでした。「日本列島七曲り」もそうでしたが、これも学生闘争当時をネタにした作品です。

実際、あれだけ学生運動が大きくなったのは、一部の活動家に大衆が乗せられたとしか思えません。もちろん、本当に目的をもって活動していた人たちもいたでしょう。しかし、運動していた学生の多くは、意見をもたない大衆だったのではないでしょうか。当時を知っているわけではないので、本当のところはどうなのか分かりませんが、一種の流行だったのではないかと、思ってしまいます。

これ以降は仮定の上に仮定を老いていくことになりますが、一種の流行だったとすれば、そのうちにその活動が大衆化し、本来の意味―体制をかえること?―をなくしていくかもしれない。そうなったとき、それはストレス解消の場ととられてしまっても仕方がない気がします。
政府としても、体制が転覆する危険性はないのだから、年に一度のストレス解消の機会にしてしまおうくらいの考え方をする。すると、今回の作品の世界になる。

この作品は学生運動が始まった時代から、ずいぶんたった時代という設定ですが、実際に学生運動の意味が失われるのにはそんなに時間は掛からなかったのではないでしょうか。―それでも年単位で掛かったのですから、当時としては長い時間だったでしょう―
どのタイミングでこの作品が書かれたか調べてはいませんが、学生運動当時だったなら、そこには「お前ら、もう一度その活動の意味を考えてみろよ」くらいの力は合ったかなと思います。もちろん、バカにするなといって殴り込みにでも来そうな作品でもありますが…。あるいは、学生運動終演後であれば、「あのときのお前らはバカやってたなぁ」くらいの作品でしょうか。この場合は過去を笑い飛ばそうという作品ですね。
どちらにしろ、もう一度見直してみたら実は本質が失われていた時期があったのではないか、と思わせる作品ではあります。
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by nino84 | 2006-10-23 20:28 | 読書メモ

「日本列島七曲り」

「日本列島七曲り」(筒井康隆、『日本以外全部沈没 パニック短篇集』角川文庫収録)を読みました。

おれの乗ったタクシーは渋滞に巻き込まれた。急がなければ明日、大阪である自分の結婚式に間に合わない。仕方ないから、飛行機で大阪まで、と思ったのだが、その飛行機がハイジャックされて…


今の生活に完全に満足できないから、それから逃げたいときもある。そういうなかで、自分の力ではそこから逃れられないと思うから、そのまま今を懸命に生きているのだろう。
では、今の生活から逃れる機会を外からあたえられたらどうだろうか。自分で逃げたのではなく、仕方なく逃げざるを得なくなったのだという理由づけさえあれば、どこへでも逃げたいと思ってしまうかもしれない。
赤軍によるハイジャックは、そういった理由づけにはうってつけの事件だった。だから、飛行機に乗り合わせただれもがその事件の被害者になりたがり、よくわからない空の旅が始まる。

僕は70年代当時の学生闘争など知らないから、彼らがどの程度の思想をもち、どの程度本気で、どの程度のことをしたのか、詳しくは知らない。「よど号」、「浅間山荘」、「安田講堂」といくらか関係した名詞が浮かぶくらいなものなのである。だから、彼らがただ現実から逃げたいために運動をしていたのか、本当に現実を代えようと思っていたのかの判断はできない。ただ―やっていたのが学生なだけに―見方によっては現実から逃げたかっただけではないのか、と思ってしまう。
この作品の赤軍は、当初北朝鮮に行けといいながら、そこを断られると、次々と目的地を変えていく。それで、結局手詰まりとなり、日本から逃げること叶わず、むしろどこにも行き所を失い、孤立してしまう。現実から逃げようとして、現実からも理想からもはじき出されてしまった人たちはどうすればいいのだろう。
もう少しまっとうに生きましょう…?


さて、なんどもいっているようですが、一連の作品は『パニック短篇集』です。ですから、大風呂敷をひろげ、それを収集する気がないというところをお楽しみください。

僕は、かなり無理して感想を書くテーマを拾っています。
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by nino84 | 2006-10-22 22:16 | 読書メモ

「パチンコ必勝原理」

「パチンコ必勝原理」(筒井康隆、『日本以外全部沈没 パニック短篇集』角川文庫収録)を読みました。

下町のパチンコ店に著名な物理学者があらわれた。彼は千円分の玉を手にパチンコ台を詳細に分析し始めたので、多くの野次馬がその勝負の結果がどうなるのかを息を呑んで見守っていた。はたしてその勝負の結果は…


これも掌編ですね。そのなかで着実に緊張感を積み重ねていって、クライマックスまで一気に読ませてくれます。

有名な先生の一挙手一投足にはなにか大きな意味がある、ような気がする。常人には理解できないだけなのだ、と権威に押されてそう思ってしまうこともある。特に、その男の顔が真剣であれば、かなり意味のあることなのだろうと思う傾向は強くなるだろう。
先生は淡々と作業をこなしていくから、それが緊張感になって、どんどん高まっていく。

最後は…たぶん、皆さんが予想するとおりです。
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by nino84 | 2006-10-21 10:50 | 読書メモ