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本の感想などをつらつらと。


by nino84
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『無人島に生きる十六人』(須川邦彦)読みました。

さて、内容はタイトルからも分かるとおり、漂流物語です。なぜ漂流ものばかり読んでいるのでしょうか。自分でも疑問です。興味を持って読んでるんで、いいんですがね。ちなみに、明治時代にあった実話だそうです。

ハワイ本島から日本へ引き返す際に、難破してしまった船。そこには、16人が乗っていた…。


漂流物語といっても、そこは実話。子どもばかりで生活しなくては!!みたいなことにはなりません。見習いは数人いるものの、まかり間違っても海の男たち。船長を始め、統制がとれております。そうでなくては、現実に無人島なんか脱出できません。
もちろんですが、もともと上下関係のあった大人の集まりだから、『蠅の王』のように獣性が表れることはないのです。平和ですな…。いや、やっていることは壮絶なんですが。

それにしても、時代を感じるのは、
ウミガメを乱獲して、喰う。「マッコウ鯨が、いっこうにすがたを見せなくなってしまった」。その理由は…「たべものであるイカやタコが、このへんにいなくなったのであろう」、「海流が変わってしまった」。とりあえず、「獲りすぎた」とか考えない時代。…素敵です。(ヲイ)


また、無人島=ジャングルなんてのは作り話だよね、やっぱ。っていうのを感じた作品。
# by nino84 | 2005-08-14 10:44 | 読書メモ

『蠅の王』

『蠅の王』(ウイリアム・ゴールディング, 1954)読みました。

新潮の100冊に入っているんで、書店でよく見かけたんだけど、表紙で敬遠していた…。少年文学として読めないこともないのにこの表紙はいただけない。内容は、少年たちが孤島で共同生活をするという、漂流もの。タイトルから内容が想像できないのもまた敬遠する理由に…。

とはいっても、ジュール・ベルヌの『15少年漂流記』とちがい、最後の数頁まで、まったく大人は登場しません。本当に子どもだけで生活していくわけです。


さて、人が集まれば、派閥ができるのが当然でしょう(学生の時、クラスメートすべてと平等に仲が良かったなんて事はないでしょう?いや、あるのかもしれませんが)。それでも、何とか一緒にやっていかなくてはならない。そうしたときには、普通、社会的な規範があるから、それに従って上手くやっている。では、その規範がなくなったら…?

子どもにとって、規範=大人とできるでしょう。しかし、無人島には大人はいません。子どもたちだけで、やっていかなくてはならないのです。
『15少年漂流記』でも同じような状態でしたが、本などの文化的なものが多くありました。一方、『蠅の王』では、文化的なものなどなにもありません。例外的に、ある少年のかけるメガネだけが、文化的なものでした。ですが、メガネは人に規範を与えるものではありません。文化的なものから、社会的な規範から離れていると、人はどうなるのか?

その答えとして、ゴールディングは、少年たちのイノセンス(無垢)を蝕む、獣性を描きました。無垢が失われ、獣性が子どもを飲み込むまでを描いたのです。人ってのは、そんなものですかねぇ…。
個人的には最後、大人と出会った瞬間に、「無垢が失われたのを、人間の心の暗闇を悲しみ、泣いた」ことが、せめてもの救いと見たい。人は獣ではないのだ、という救いに。
# by nino84 | 2005-08-10 10:45 | 読書メモ