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本の感想などをつらつらと。


by nino84
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『ドグラ・マグラ』

『ドグラ・マグラ 上・下』(夢野久作, 1935)読了。

もう、つかれたよ、パトラッシュ。
「これを読む者は、一度は精神に異常をきたすと伝えられる」(紹介文)…煽りすぎだよ、角川書店。表紙も含めて、取っつきにくさが目に付きます。
作品は、一般にはミステリに分類されています。しかし、読み終わって、すっきりしないミステリってのは、どうなんでしょう?まぁ、それはこちらの読解力の問題ともいえるので、それはそれなのでしょうか。

それにしても、解説にも書かれていましたが、知識の量はすごい。フロイトの理論、中国古典など、多岐にわたる知識をこれでもかと下に敷いており、およそ70年前に書かれた著作とは思えないエネルギーを持っています。

また、中心に据えられているのは、所謂、記憶の遺伝です。形質が遺伝する。さらに、それが、系統発生的に、個々の家系で独特の形質を示すようになる、ということは納得できましょう。しかし、記憶のそれは、記憶が遺伝子に記されているということになって、明らかに、とんでもないことなのですが…。このあたりにユング的なにおいを少し感じますが、作中では、人という種による記憶(無意識)の共有でなく、あくまで血による記憶の共有という事で、少しずれています。
一方で、作中での記憶の共有は、自閉症等の遺伝性の精神病を示唆しているとも見えます。
(主人公の家系は「狂人の家系」と言われていることから、こちらと見たいところですが、作中で、完全に記憶等が先祖返りしているため、イコールではない。)
さらに、痛烈な精神科医批判(精神病の解放治療への示唆や、精神病の診断名についての批判等)も凄い。もっと後世になってからの事ですよ、それが言われるようになるのは。

あとは、「変態性欲」所謂、死姦等)にもふれており、(っていうかキーワードの一つですが、)このあたりにもフロイトの考え方(リビドー)を感じなくはない。
ちなみに、フロイトの『夢判断』は1900年出版。ユングの元型(アーキタイプ)は1919年。翻訳がいつでたのか分かりませんが、何にしてもまだ学会レベルでしょうきっと。結果よりも著者の思想のほうに、感心してしまったのは、僕が心理寄りだからですか?


結局、一週間近くかかりながらこの程度のことしか書けません。結論に自信がもてないからいけないんですよね。今回は、メモがかなりメモでしかないので、興味を持ったらググってみてください。なかにはネタバレ前提で、一読してからの方が良いサイトもありますが。
by nino84 | 2005-08-21 10:43 | 読書メモ