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本の感想などをつらつらと。


by nino84
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『インセプション』

『インセプション』(2010)をDVDで観ました。

タイトルのインセプションとは、「植え付け」という意味です。
レオナルド•ディカプリオ演じる主人公、コブが、仲間とともに、渡辺謙演じるサイトーの依頼で、ある人物に、あるアイデアのインセプションを試みる、というのが大筋ですね。
サイトーには、夢であっても、アイデアは現実に持ちかえられるので、夢で、インセプションして、現実に影響を与えよう(ライバル会社の切り崩し)、という意図があります。

冒頭は、インセプションの計画を立てることで、この映画のルールを説明してくれるので、比較的理解はしやすいのではないかと思いました。
あの、最後の結末の解釈は観た人に任せます、というのを、どうとるか、というのはあるとは思いますが…。


個人的には、主人公コブが、(自分なりの)現実を生きられるようになること(自己一致)、が大きなテーマと捉えました。これがテーマであれば、最後が夢か現実かなんてことは関係なくなるので。

妻モルは、どこも現実だと思えなり、コブの前から消えましたが、コブは妻が消えたということを現実として、生きています。それでもそれを認められないというコブは、現実自己(モルは死んでいる)と理想自己(モルは生きている)が、相反している。
コブは一度モルは死んでいるということを現実と認識していますから、それは変えられない(アイデアは成長する)。だから、モルが生きている、ということを納得できることが自己一致には必要です。
「アリアドネという設計士の助けを借りながら、自己一致できました」というのが、結論であれば、投げっぱなしではない。
モルはどこも現実と思えなくなる、という残念な結末を迎えてしまったのですが、「本人が現実と思ったところが現実」という、別の落としどころもある。ただ、それは結果として、視聴者である僕らが生きている世界をも現実かどうかを疑わせかねない結論ではあるが。

そう考えると、最初の悲劇は、モルへの誤ったインセプションか。
モルとコブが、全く同じ現実(夢)を生きていればよかったが、それは無理だ。素朴に考え方が全く同じ人間なんてありえない(独りよがりでなく、健全な思考伝播がない限り)。そういう意味では、インセプションの仕方として、2人が同じことを考えている、というアイデアがもてれば、それぞれの夢の中で、それを現実として生きられたのか?
ただ、コブはモル以外の人間たち(子どもなど)を大切に思っていた訳で、結局、コブがそうしたことを試みるためには、自己のスプリットが必要だったのかもしれない。

これは踏み込みすぎかもしれないが、人がわかり合うことの難しさまで、示唆しているようにも思える(コブが自分の脆さを仲間に開示できないように)。
by nino84 | 2011-09-04 11:20 | 視聴メモ