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本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「女生徒」

最近短編集ばかり読んでいて思ったんですよ。収録作品全ての感想を書くのは無理なのではないかと。『号泣する準備はできていた』(江國香織)に関しては3回にわけて更新しているうえに、無駄に長いですし。
長くなるのも、更新頻度が落ちるのも、どちらも問題だというのなら、短編一作ごとに感想を書けばいいのではないかと思い始めました。と、いうわけで…

「女生徒」(太宰治、『走れメロス』、潮文庫収録)を読みました。

朝起きて、身だしなみを整えて、掃除をして朝ご飯。戸締まりをして電車で登校。
授業後は友だちと美容院へ行って、バスで帰宅。母のお客さんが来ているようだったので、その人たちの分まで、夕食を作る。食器を片づけたら、お風呂を沸かして入浴。
お母さんにちょっと孝行してから洗濯。あとは寝るだけね。



古き良き時代…かどうかは分からないけれど、一昔前のどこにでもいそうな女の子の一日(のように思われるもの)。それが一人称で書かれてる作品。他の作品に比べて随分読みやすい印象を受けたのは、この作品が女性の独白という形で書かれているからでしょう。
また、思いついたことをそのまま文章に起こしたように次々と話の中心が変化していくのが面白い。時にとてもミーハーなんだけれど、時にとても感傷的になったり、自戒的になったりといろいろな側面が見られる。それが「ホントっぽい」のであろう。女の子から女性へ変わるその途上にある人の揺れる感情がみられるように思う。
あとは、文体も句読点の使い方が独特で、なんとなく柔らかい感じが出ているように感じもした。


「自分から、本を読むということを取ってしまったら、この経験の無い私は、泣きべそをかくことだろう。それほど私は、本に書かれていることに頼っている。一つの本を読んでは、パッとその本に夢中になり、信頼し、同化し、共鳴し、それに生活をくっつけてみるのだ。また他の本を読むと、たちまち、クルッとかわって、すましている。」
最近完全に同化することはできなくなったけれど、何処かで共鳴するところはあって、こういうことをやっている、と感じることは多い。これが認識できていれば、あとはそれを意識的に調整することができればいいのだろうが、それがまた難しいのだろうね…。


こういう各所で評価がされてるような作品は感想も書きづらいなとしみじみ思うのですが、自分なりに感じたことをつらつらと書いてみました。
by nino84 | 2006-08-08 20:09 | 読書メモ