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本の感想などをつらつらと。


by nino84
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「心理試験」

「心理試験」(江戸川乱歩、『江戸川乱歩傑作選』新潮文庫収録)を読みました。

蕗屋清一郎は綿密な計画の末に、老婆を殺した。お金がほしかったのだ。
事件は証拠に乏しく、犯人を特定しかねていたため、警察は被疑者に対して心理試験を行うことを決めた。蕗屋はそのことを知り、対策をたて、試験に臨んだ。試験の結果に怪しいところはないように見えたのだが…



お金を貯め込むことが生き甲斐である老婆をお金を持っていない青年が、そのお金を有効利用することができる、として殺す。蕗屋の老婆を殺す動機ですが、『罪と罰』を思い出しました。結末は違うので、ただそれだけのことですが。

さて、この作品には「D坂の殺人事件」につづき、明智小五郎が登場します。が、彼がどうこうというよりも、心理試験を使った小説だというので、なかなか興味深い。
刺激語に対する反応時間を見て、それで深層心理を探る、というもののようです。真剣にやろうと思ったら、犯罪に関係ある単語とそれ以外の単語、それぞれで反応時間の平均を出して差があるかを検定するのだろうか…。あれ、でもそれじゃあ、個々の記録は見えないですね。集団の傾向が見えるだけなので。ということは、あれで正しいのか。
むしろ、質が重要視されているようなので、そんなことまでしないのかも知れませんね。ただ、刺激語が無数にあるので、ダミーの単語の質まで分析するとなると大変な作業量で現実的でない気がします。
といいながら、小説なのでかなり刺激語が絞られてるという現実。そうでなければ結論に達するまでのプロセスが無駄に長くなるので仕方ないですね。

印象としては少しアイデア倒れかなとも思います。
by nino84 | 2006-08-22 23:57 | 読書メモ